秩序の無い世界
皆には馬車でのんびり帰ってもらい、俺は城へ報告へ行く。
思いがけずダンジョンボスにも会ったし、全モンスターの情報も手に入った。
ダンジョンの深さ等はマップで確認済み。全20階だったよ。
これらの情報を王様に渡して、ミッション終了だ。
王様からは子供達のレポートを見せてもらった。
うんうん、ちゃんと書けてるね。
ただ、子供達からは、俺が突然辞めた事に対してのブーイングがあったらしい。
元々臨時教師だからって言ったら、専属でも良いと言われた。
お断りです。やる事は一杯あるので。
まぁ、ヒマな時はやっても良いですよと伝えると、凄く喜んでた。
今度やる時は、ゲームの作り方を教えるかな。
さて、これで自由の身だ!
何をするかって?
勿論、新しい大陸に行くのさ!
俺達は島に移動し、船に意気揚々と乗り込む。
そこにはアンドロイドが1体居た。
メガネをしてるから、オリだな。
そういえば、船担当だったなぁ。
「おはようございます、御主人様。どちらまで?」
「勿論新大陸さ!」
「……新大陸に船で行かれるのですか?」
「他に手段なんか無いじゃないか」
「いえ、わざわざ長旅をされるのかと不思議に思いまして」
「ん? 何が言いたい?」
「船だけをオートで新大陸に向かわせます。到着次第船に移動すれば、無駄な時間がありません」
……た、確かに!!
新大陸に向かうってだけで、船旅だと思ってた!!
それにはナグラさんも驚いている。
あれっ? カンダさんとコタニさんは当たり前って顔してるな。
も、もしや、気づいていたのか?!
俺は落ち込んだが、ナグラさんはオリに食いついている。
「海賊退治はどうなるのよ!
襲ってるのを発見するか襲われるかするんだけど、ピンチに陥りながら仲間の助けを借りて勝つのよ?!
そして仲間が増えていき、最終的には海賊王になるのよ?!
『友情×努力=勝利』、これに則った話の展開!!」
「そもそも、海賊は近海です。沖に出れるほどの船を海賊が持っている訳がありません。
そのような船を持っている会社は国が管理してますね。
それに沖に出るなら、それは海賊ではなく冒険家か運輸です。
万が一、海賊がそのような船を入手しようとするならば、国にすぐにバレて捕まります。
隠れて建造しますか? 技術者を集める時点でバレると思いますけど」
「だ、だって……、そう、船は富豪から譲り受けるのよ!」
「船を個人に渡すなんて、どれほどの富豪なのですか?
王族でも不可能じゃないですか?」
「だって、だって……」
「それにですね、この船が海賊相手にピンチになると思いますか?
海賊王? この船を持っている時点で、そう名乗っても問題ありませんよ?
友情と努力で勝利するんですか? では相手も友情と努力を保持していた場合はどうなるのでしょうか?」
「敵はそんなの持ってないわよ!」
「では敵は努力もせず仲間も持たずに成り上がったのですね。
では弱いでしょう。ピンチになりませんね」
「いや、そこは汚い手を使ってさ……」
「あぁ、人質を取るとかでしょうか? そのような事を気にしていては、海賊王になるのは無理では?」
「むむむむ……」
ナグラさん。もう諦めなよ。
そんな話をしたって、正論で返されるだけだって。
「もう、判ったわよ!
でも、まだ見ぬ海の生物や怪物との戦いは必要よ!」
「ですから、この船の性能では戦いになりませんから。蹂躙が相応しいかと」
そうだろうなぁ。
ビームで弱点を一撃、ってなりそうだわ。
「じゃ、じゃあ、色々な島を発見、そしてそれでの出会い、そこで起きている陰謀や策略……」
「人の住んでいる島は大陸の近海にしかありません。
それに島に到着する度に、陰謀や策略が起きているのですか?
そんな世界はイヤですね。不幸しかないじゃないですか。その世界を管理している神は何をしてるのでしょう?」
「そ、そんな事、知らないわよ!」
「地獄のような秩序の無い世界ですね。
まぁ、そんな世界の話は置いておきまして、本当に船で移動するのですか?」
はい。勿論諦めました。
よく考えたら、どうせ夜には家に帰るもんなぁ。
素直に船が到着するのを待つとするよ。




