馬券購入
近づいてきた男は、これまた金満デブハゲだった。
シキメの親戚か?
「ブヒヒ、今日も負けるのを見に来たのか? わざわざご苦労だねぇ」
「今日はお前の馬には負けん! いや、1着だ!」
「無理無理、あの駄馬は掲示板にも載れないね」
「ふん、見てるがいいさ!」
「無理しちゃって、ブヒヒヒ」
そう言い残して去っていった。
何だ? 先祖は豚なのか?
それにしても失礼なヤツだな。
「いや、不快にさせましたかな? すみませんでした……」
「いえ、気になさらず。ところで誰です?」
「私の商売敵でして。ホテル経営で負けているので、競馬で勝とうとするのですよ。
私の馬が出走する時は、必ず馬を出してきます。それも金で買った強い馬をね。
競馬で勝って嫌味を言うだけなので、害はありませんが……」
「あぁ、そういう事でしたか」
「さあさあ、この話はここまで! 私の馬を見てくださいな!」
サガワさんの馬は『サガワスピード』という名前だった。
現在はパドックを回っている。なかなか早そうな馬だ。
出走するレースは男爵級というグレードレースだそうだ。
ちなみに、王級→公爵級→侯爵級→伯爵級→子爵級→男爵級、の6段階となっている。
前世で言う、G3って感じだろうか。
何で勝てないんだろう?馬柱を見ても問題なさそうだし、単勝オッズも3番人気だ。
不思議に思ってると、こっそりキジマさんが教えてくれた。
「さっきの豚、いえ男ですが、このレースに6頭も出走させていますよ」
「えっ? そうなの?」
「はい。なので、多分勝たせる馬が1頭と、負けても良い馬が5頭だと思います」
「どういう事?」
「レース中に負けても良い馬は、サガワさんの馬の妨害をするのだと思います」
「それって許されるの?!」
「反則行為です。でも発覚しないようにしているのでしょう」
あの豚め~!!
こうなりゃ俺の強運を発動だぜ!
早速馬券を買いに行く。
単勝馬券に500万もツッコんでやったぜ!!
「そ・そんなに私の馬の馬券を買って良いんですか?!」
「大丈夫です! 勝つと信じています!!」
大丈夫!ハッキリ言って、勝たせます!!
俺が大金をツッコんだからか、サガワスピードは2番人気で3倍になっていた。
豚の馬は『トンズラ』という名前で3番人気に落ちた。ザマァみろ!!
豚だしハゲだから、そんな名前にしたのかね?
豚を見ると、人気で負けてるので悔しがってる。プークスクス。
ファンファーレと共に、レースがスタートした!
すかさず『サガワスピードが1着に!! 負けたらアサイさんやイイクラさんの事を閻魔様にチクる!!』と祈る!!
レース前に祈らなかった理由は、勝ちそうな馬が出走取消になったら面白くないじゃないか。
レースで豚の馬を負かすから良いんだよ!
現在『トンズラ』が先頭を走っていて、『サガワスピード』は5番手辺りだ。
キジマさんが言ってた通り、豚所有の馬が取り囲んで行かせないようにしている。
第4コーナーを曲がって最後の直線に入った!
『トンズラ』はラチから1頭分外側を走っている。
『サガワスピード』はいまだにラチ沿いに居る。
次の瞬間、『トンズラ』はバランスを崩し、落馬転倒した!
『サガワスピード』を囲っていた馬を巻き込んで。
これで『サガワスピード』の包囲網が崩れ去った。前の1頭をかわして外に出す!
そこからは独壇場だった。持ち味のスピードを生かして一気に抜け出たのだ!
そのまま先頭でゴールイン!!
サガワさん、涙して大喜び!!
豚は膝から崩れ落ちてた。
そして俺は3倍が的中してウハウハ!!
1500万になったよ!!




