炎の話
何故かドン引きされたので話題を変えようと思ったが、一応聞いておこう。
「あの~、何で皆引いてるんですか……?」
「……この世界の場合、毒の攻撃は主に強敵相手に使います。
何故かと言うと、倒す為ではなく逃げる為です。
即効性のある毒が好ましいですが、暗殺等に使われるので出回ってません。
ギルドランクの高い人だけが使用許可がもらえます。
なので、自由になる=生きて帰れる、という図式なのです。
貴方のように倒す為に使う人は居ません。
まして、チクチク攻撃するなどありえませんよ?」
そ、そうだったのか……。
足止めして逃げる為なのね。
「ついでに言えば、強敵は毒耐性を持っている事が多いです。
なので、動けなくなる事はほぼ無いです。
動きが鈍くなる程度ですね……」
おっと、強力すぎる点も引く対象だったようだ。
今度からは言い訳を考えよう。
良し! 話題転換だ!
「と、ところで、新しい魔法が認可されないと言う事でしたが。
では魔法使いの人達は何をやってるんです?」
「今ある魔法を最適化する作業ですね」
「最適化?」
「使用する魔力を減らしたり、攻撃魔法の威力を上げたり、とかですね」
なるほど。
それなら需要があるね。
「それは良いとして、他にどのようなアイデアを出されたのです?」
「あれっ? その話題は終わったはずでは……?」
「はははは、そんな訳無いじゃないですか!
教えてくださいよ~」
「え、えっと、そ、そうですね……あっ、さっきの『ピットフォール』もそうですよ」
「ほう! あれも貴方のアイデアですか?!
素晴らしいですね! 他には?!」
「え~と、あっ、炎については話しましたね」
「なかなか興味深いですね。具体的には?」
グイグイ来るね、この人。
それらについてはホウズキさんがもう作ってると思うんだけど。
「教えるのは良いですけど、もうホウズキさんが作ってると思いますよ?
今から開発しても間に合わないと思いますが」
「いえ、私は作るつもりはありませんよ。
自身の興味から聞いているだけですので、気になさらず。
さぁ、教えてください!!」
やはりノートルダム。
魔法に関しては変態の多い国だな。
「あ、あのですね。炎って温度によって色が変わるんですよ」
「ほほぅ! 例えば?」
「た、例えですか?!
え~と、え~と……ナグラさん! ヘルププリーズ!」
「え~、何よ」
「炎って温度で色が違うよね。それを判りやすく説明してあげて欲しいんだ」
「簡単よ」
えっ?
簡単なの? そうなの?
「例えで言うならろうそくの火でも良いじゃない。
中央と周辺の色って違うでしょ?」
「確かに。少なくとも2色に見えますね」
「えっと、誰?」
「おっと失礼しました。私はナゴ。数学を教えています。
それで、その違いは?」
「えっと、中央の芯に近い部分は温度が低いの。
周囲の方が温度が高いのよ。だから色が違うのよ」
「なるほど! それは判りやすい!
そういう話をされたのですね! それで、それと魔法の関連性は?」
「ファイヤーアローってあるでしょ?
あれって赤色と言うか朱色っぽいじゃない?
多分ロウソクの火と同じくらいの温度だと思うの。
でも、温度を上げたら強くなると思わない?」
「そういう事ですか! なるほどなるほど!
それでどうやって温度を上げるんです?
温度が上がると何色になるんです?!」
落ち着いて欲しいなぁ。
まぁ、今は興味がナグラさんに移行したから良いけどさ。
「温度が高くなると青色になるはずよ。
それで温度を上げる方法だけど、それには燃焼の3要素が関係するわね」
あっ、だんだんと難しい話になってきた。
これ、ホウズキさんの時にもこうだったわ。
その時も俺はリタイアしたね。
こういうのは現役の学生の方が詳しいんだよな。
まぁ、ナグラさんは病院で通信教育だったらしいけど。
さて、ここはこのまま放置してと。
俺は自分の生徒に話をしようかな。
「はい、生徒は集まれ~。
先生の勇士は見てくれたかな?」
「「「「「……はい」」」」」
「元気が無いなぁ。
では今後の予定を伝えます。明日は休みです!」
「「「「「……えっ?」」」」」




