解説と新たな先生
ホウズキさんは穴からトンマ先生を引きずり出してお持ち帰りした。
別に変な意味では無いよ?
ある意味では変な意味だけど。
後日聞いた、調べた結果は次の通り。
毒の泉の水を振りかけた場合。
・皮膚等から浸透するのに1分くらいかかる
・触れた場所だけに効果が出る
・効果は飲用した場合よりも弱い
・1時間で効果が切れる
・1時間内に連続で使用した場合、麻痺が進み、4回も使用すると壊疽が起きる
人体実験じゃないですか!
なんとも恐ろしい……。
そんな事して大丈夫なのかと聞くと、
「各国の王や神様と繋がっている福田君に悪さをした者が、許される訳が無い。先に罰を与えただけ」
というイヤな回答が返ってきた。
まるで俺が元凶みたいじゃないか。
まぁ、これは後日の話。
今現在はと言うと……、説明を求められています。
生徒に、だけでなく、集まってた先生達にも。
「だからね、彼は近づかれると不利だったんだよ。
まず、魔法の詠唱を聞かれるから、何を発動させようとしてるかがバレる。
次に、接近戦はしたくない。
この2点から常に一定の距離を保ってたんだ」
「そうなんだ~」
生徒は素直ですね。
先生方は、そんなことは判っているから続きを話せって顔してるけど。
「それを見抜いた俺は、彼の背後に魔法を発動させたんだ」
「落とし穴を作る魔法ですね! 初めて見ました!」
「これは俺とホウズキさんとで共同開発した魔法だよ。
多分近い内に発表されるんじゃないかな?」
「いえ、既に発表されています。中級魔法になっていますね」
「ありゃ、そうだったか。で、貴方は?」
「おっと、挨拶が遅れました。
私は算数と数学を教えているナゴと申します。
それよりも続きをお願いします!」
「は、はぁ……」
ナゴ先生か。
数学を教えているって事は、午前中受け持ちの人だね。
トンマ曰く専属教師ってやつだ。
しかし、続きを急かす所を見ると、やはりノートルダムの先生だな~と思う。
この国、魔法バカばっかりだよね。
「彼は俺から目を離さなかった。
だから背後に起きた事に気づかなかったんだろうね。
俺が1歩進むと、距離を開ける為に背後も見ずに下がった。
だから簡単に落とし穴に落ちたんだ」
「どうして、その後にダッシュしたんですか?」
「もし落とし穴の魔法を知っていたら、すぐに抜け出てくるだろ?
そしたらまた距離を開けられる。って事で近づいたんだよ」
「その後の魔法はウォーターですか?」
「いや、違うだろう。ウォーターではあんな風に水の玉にはならない。
違う魔法だ。ですよね、福田先生!」
ちっ、ナゴ先生め。よけいな事を。
俺のウォーターからフリーズって言って誤魔化す作戦がパーじゃないか!
それにしても違いが判るのか。
じゃあ、さっき学園長は判ってたんだろうなぁ。
さて、諦めて説明するか……。
「ウォーターでも問題は無いぞ。土は水を含むと固まるからな。穴から出にくくなるだろ?
それに服が濡れた状態でフリーズの魔法を与えれば、寒くて動けなくなる」
「なるほど。上手い作戦ですね。
皆、判るかな。ウォーターもフリーズも初級魔法だ。
つまり中級や上級の魔法を知らなくても、いくらでも戦い方はあるって事だぞ。
大事なのは創意工夫。ちゃんと覚えておくようにね。
それで、先生、先ほどの魔法は?」
ナゴ先生、俺の言いたい事を全部言ってしまいました。
それは俺が説明したかったのに!
「……さっきの魔法は新しい魔法です」
「ほうほう、ランク的にはどのくらいで? 中級ですかな?」
「ええっと、そこは内緒です。気になるならホウズキさんに聞いてください」
言えるか! 禁忌魔法だぞ!
そういうのはホウズキさんに丸投げだ!
「そうですか……。で、魔法名は?」
「……ポイズンです」




