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ホウズキさんの悪巧み

俺とトンマ先生は20m離れて相対している。

魔法の教師だから接近戦は苦手だからだろう。

トンマ先生は、それでもさらにジリジリと下がっていく。

まだ距離が欲しいのか?


審判はカンダさんに頼もうかと思ってたんだけど、丁度授業終了のチャイムが鳴った。

すると学園長がこっちに来たので、審判を頼んだのだ。


学園長が審判で模擬戦をすると聞いて、生徒がワラワラと集まってきた。

ついでに他の教師の姿もチラホラと見える。


「ではこれより模擬戦を始める。

 勝利条件は、相手が気絶するか降参した時、もしくはこれ以上は必要無いと私が判断した時だ。

 敗北条件は、先の条件と、相手を死亡もしくは部位欠損させた場合は反則負けとする。

 模擬戦は、魔法は全て許可、武具は学校の備品を使用してもらう。

 異議は無いな?」

「問題無いですとも、学園長。すぐに終わらせますよ」


トンマ先生は強気だ。

何か策でもあるのだろうか?


「では、開……」

「ちょっと待ってくれ!」

「うん? これはホウズキ先生ではないですか。何か?」

「いや、少し福田君に用事があって来たのじゃよ」

「俺に用事ですか?」

「そうじゃ。

 学園長。少しだけ話をさせてもらっても良いかね?」

「では1分ほど待ちましょう」

「ありがとう。すぐに終わるよ」


ホウズキさんは俺を連れて、少しだけ移動し学園長とトンマ先生に背を向けた。

何か内緒の話かな?


「話って何ですか?」

「前に福田君と話していた新しい魔法が出来たので、持ってきたのじゃよ」

「そう言えば、そうでしたね。

 別に今じゃ無くても良かったんじゃないですか?」

「ほっほっほ、丁度実験が出来るじゃろ?

 ワシも効果が見たいしの。使ってみてくれ」


皆、俺を外道とか言うけどさ、ここに真の外道が居ますよー!

作った魔法の効果が知りたいから実践で使えって、ヒドくないですか?


「どんな魔法が出来たんです?」

「まぁ3種類ほど作ったのじゃが、これだけが実験してないのじゃよ。

 なので、これを頼む」

「何です、これ?」

「ポイズン。毒の水を発生させる魔法じゃ。

 ほれ、前にエリクションを作ったじゃろ? あれの応用じゃよ」

「え~?! じゃあどこかの毒の所の座標をセットしたんですか?!」

「おぉ。その為に毒の泉があるというダンジョンまで行ってきたぞ!」


なんという無駄な行動力!

魔法を完成させる為だけに、ダンジョンまで行くとは!


「で、その毒の泉の水は、どんな効果なんですか?」

「冒険者の話では、飲むと体が麻痺して動けなくなるらしい。

 それを体にかけた事のある者は居なかったので、そちらの効果は不明なのじゃよ」

「それを使って調べろって事ですか……」

「その通りじゃ! まぁ、死ぬ事は無いじゃろ。

 飲んでも麻痺するだけで、1時間で回復するらしいし。

 なによりもエリクサーを使えば、すぐに回復出来るし」

「有効範囲は?」

「自分から半径3mまでじゃな。

 その範囲内なら、目で見た場所に発生させる事が出来るぞ。

 近いと自分にもかかるから気をつけるようにな」

「量は?」

「1回に1Lほどじゃ。エリクサーより増やしてある。

 かけた場合、どれくらいで効果があるか不明じゃから増やしておいた」


目で見た場所に出せるのなら、比較的安全だな。

量も調整可能なら、結構ひどい魔法だけど。

だって、人が飲んでる物にこっそりと2~3滴入れる事も可能だよ?

そりゃ禁忌魔法にされるよね。


「判ったよ。実験してみるよ」

「良し! じゃあこれを読むが良い。すぐに覚える事が出来る」

「既に文章にまでしてるのか……用意周到だな」

「すぐに結果が知りたかったからのぉ」

「ところで、相手は貴族だけど、良かったのか?」

「あぁ、どっかのバカ息子じゃろ?

 後で王に行っておくから気にする事は無いわい。

 明日には居なくなるじゃろ」


じゃあ、頑張って実験してみますか。

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