鴨葱
「お前が臨時教師の福田ってやつか!」
「はぁ、そうですけど」
「俺はこの学園の専属教師のトウマだ!」
「トンマさんですか」
「トウマだ!!」
何やら偉そうに色々喋っている。
俺は聞いてる振りをしながら、横に来てたハズキ君にこっそりと聞いてみる。
「誰?」
「魔法の教師のトウマ先生です。
確か伯爵家の3男だと聞いてます」
前にも言ったが、この学園では身分は関係無い。
平民も貴族も王族も1生徒として扱うのだ。
だが、それは生徒の話なんだってさ。
教師には当てはまらないらしい。
それと、すっかり忘れていたが給料の事。
歩合制で1時間いくらってなっているそうだ。
そうなると、必須科目の教師は安定した給料を貰える。
午前中は全部必須科目の授業だから。
困るのは選択科目の教師。
だから長く授業をしたいのだ。
午後は選択科目の時間なので、どうしても多く時間を取りたい。
でもそれでは当たり前だけど、場所取り合戦になってしまう。
なので、生徒の数が多い方が優先されるんだって。
例外は、そのクラスに成績優秀者が居る場合。
例えば魔法開発のクラスだったとして、生徒が4人しかいないとしよう。
その場合、場所が取れる可能性は0に近い。
だが、ホウズキさんのような人が1人居れば優先されるのだ。
さらに、過去に多く排出してきたクラスも優先されるらしい。
こちらの場合は、年毎の成績で多少上下するみたいだけど。
長くなったけど、このトンマ先生。
伯爵の力を使って、生徒を集めているらしい。
その割には授業がつまらなく、生徒には人気が無いんだって。
ハズキ君、辛辣ですね。
で、別に専属の必要は無いんだって。
俺みたいに兼任してる教師も沢山いるらしい。
朝は肉屋さんをしてて、ヒマになる昼から教師をしてる人も居るそうな。
そういう人の方が、授業が面白いらしいです。
優秀なら肉屋でも教師に抜擢するなんて、凄い学校だよね。
で、トンマ先生。
ハズキ君曰く、他に出来る事が無いから専属なんだよ~との事。
3男だから家も継げないし、商売出来る程柔軟じゃないし、ブサイクだし。
……もう少し、オブラートに包む事を覚えようか。
さすが王族なだけあって詳しいけどさ、最後のは必要無いんじゃないかな?
「……だから、お前は教師を辞めろ!」
「すみません、聞いてませんでした」
本当に何も聞いてなかったわ。
ハズキ君情報が面白くて。
「キサマ、俺をバカにしてタダで済むと思うなよ!」
「済むんじゃないですか?」
「俺はな、中級魔法を全て覚えてるのだぞ! お前なんか一撃だ!」
「……」
ちゅ、中級ですか。
すみません、俺、上級どころか禁忌魔法まで覚えてますけど。
とはさすがに言えない。
あっ、丁度良いわ。
「じゃあ、模擬戦しましょうか。
貴方が俺に一撃でも入れれたら、俺は今すぐに教師を辞めますよ」
「ふん、言ったな。その言葉、忘れるなよ」
「ええ。
皆、今からトンマ先生と模擬戦するからな。見てろよ~」
鴨が葱背負ってやってきたぜ!
俺も出来る子なんだって見せてあげないとな。
「カンダ先生。何か福田先生が悪い顔してるよ?」
「あぁ、気にしないで。いつもの事だから。さ、皆、少し離れていようね」
カンダさん、聞こえてますよ……。




