模擬戦1
さて模擬戦だけど、M1はまだ準備が出来ないようだった。
いや、武具とかはこの学園にある物を用意しておいたよ?
装備の仕方は知ってるようだし、知らないならカンダさんが教えるし。
結局のところ、覚悟が出来てないようだ。
「はいはい。時間が無いよ~。
実際の冒険ではモンスターは待ってくれないよ~。
もしこれが戦争や紛争でも同じ事だぞ~。
ついでに言えば、警察だったら犯人逃げてるぞ~」
「で、でも……」
「はいはい。言い訳は良いから。
後5分で始めるからね。あっ、M2も用意しといてよ。次だから。
そうそう、棄権ってのも認めるよ。その代わり、次からの授業には参加出来ないけどさ」
全員が困惑した表情になった。
棄権したいけど、授業が受けられないのは困るって所だろうか?
怪我はしないんだから、さっさと戦えば良いのに。
まぁ、相手がチョロだから、血を吸われて無力化されるとは思うけどさ。
それは怪我じゃない。うん、怪我じゃない。大丈夫、怪我じゃない。
「はい。5分経過。じゃあ始めるよ~。
準備出来てなくても覚悟が出来て無くても始めるよ」
「ちょ、ちょっと待って!」
「ダメ~。はい、開始!
あっ、チョロは手加減を忘れないでね?」
「判っておりやすよ」
M1はやけくそになって魔法を唱えだした。
ファイヤーアローだね。
チョロはそれをヒラリヒラリと避けながら、どんどんM1に近づいていく。
そして、一番前に居た男の子に取り付いて血を吸って無力化した。
それを見た女の子は恐怖したのか、まだチョロが乗っている男の子に向かって魔法を打った!
なんちゅう危険な事をするんだ……。
チョロは男の子を蹴り飛ばし、その反動で自分は宙に逃げて避けた。
そのまま次の子に取り付いて無力化する。
結局全員が無力化されるのに3分もかからなかった。
「はい。そこまで。
2分半か……。全滅が早いな~。
はい、次。M2は前に出て。M6は悪いけどM1を引っ込めて。
コタニさん、治療をお願いね」
「了解っス」
治療といっても、エリクサーをぶっ掛けるだけだ。
あれなら状態異常も治るからね。
昨日の内に、皆でダンジョンに行って1Lほど汲んできたんだ。
あの程度なら1滴あれば治りそうだけど、さっきみたいな同士討ちがあるかもしれないから。
M2は魔法を乱れ撃ちして弾幕を張る作戦にしたようだ。
でもそれも高く飛ぶ事で簡単に避けられてる。
そして回り込まれてジエンド。
M3とM4は慣れない近接武器を持ち出した。
当然慣れてない武器だから、何の役にも立たない。
結果、魔法も疎かになってしまい、瞬殺だった。
いや、死んでないけど。
M5は防御に徹した。
盾を持ち出したのだ。それで全員で集まってる。
悪くない戦法だ。だけど、ヘタクソすぎるし誰も攻撃しない。
時間だけが無駄に過ぎるので、失格にした。
M6はそれを参考に、3人で防御して1人が中心で攻撃する事になった。
だが、1人での攻撃なんか当たる訳が無い。
薄くなった防御の隙をチョロに狙われ、あっけなく瓦解した。
「はい。これで魔法のみで構成された組は全滅ね。
次はSの番だね。用意して」
Sは近接戦闘に長けている、戦闘職だけで構成されている。
少しは耐えるんじゃないかな?
そう考えてたらチョロからお願いされた。
「すみません……。もうお腹がタプタプです……」
「ありゃ。まぁ、24人分も吸えばそうなるか~」
「チョロの良い所、見てみたい、はいっ!はいっ!はいっ!」
「ナグラさん、飲み会じゃ無いんだから、煽らないの!」
「珍しく活躍したんだから、最後まで頑張ってもらおうと思ってさ」
このまま続けたら吐いちゃうよ。それに珍しくとか言ってやるなよ。
だからチョロよ、フードに入って泣くのはやめてくれ。
腹パンパンだから、微妙に重たいんだよ。首が絞まる……。
「はい、注目。
チョロは体調不良なので、ガーが代わりに相手しまーす」
「「「「えーっ?!」」」」
そりゃチョロだと思って対策してたんだろうから、相手が代われば文句も出るよな。
頑張ってくれ。




