初授業
それにしても、こんな簡単に授業内容を変更しても良いものか。
事前に連絡があったと言っても昨日でしょ?
生徒も困惑するだろ? いや、適応してるな。
よくある事なのか?
「それでは福田先生。後は頼んだよ」
「あ、はい」
学園長に促されて、俺は教壇に上がる。
ざっと見渡すと、今日の生徒には年齢の高い人はいないようだ。
若い生徒ばかり。8~15歳って感じかな?
「え~、何故か教師をやる事になった福田です。
何を教えるかって事ですが、これといって決めてません。
なので皆さんからの質問タイムとしましょう。
出された質問に答えていきます。判らない事や言いたくない事は答えませんよ~」
俺がそう言うと、教室の中はザワザワしだした。
何を質問しようか友人と相談してるようだ。
その中の、最前列に座っていた女の子が手を上げた。
「ナグラ先生とコタニ先生は、福田先生とカンダ先生の奥さんですか?」
「違いますよ。カンダ先生はニーベル国に奥さんが居ます。
今は妊娠中なので、ここには来ていません」
最初の質問がコレかよ。
どこの世界でも同じだなぁ。
だが、これが良いきっかけになったようで、次々に手が挙がりだした。
「先生は前は何をしてたんですか?」
「今も冒険者です」
「好きな食べ物は何ですか?」
「イチゴが好きですね~」
「ダンジョンとか行った事があるんですか?」
「ありますよ~」
「どこに住んでるんですか?」
「基本はニーベル国です。旅が好きなのでウロウロしてますけど」
「どこに旅に行きましたか?」
「ニーベル・ノートルダム・セキハイム・コルラド・ロッツギル・グランザム、の6国は行きましたね」
お~、と驚いてくれる。
皆、国を出る事が無いらしい。
留学生も自国とココしか知らないようだ。
旅の事を授業にすると良いかも?
もしくはサバイバルか?
それにしても、途中に変な質問が混ざってたな。
この後も色々な質問が飛んできた。
「犬と猫、どっちが好きですか?」「昼は何を食べますか?」「海って大きいですか?」
等の謎の質問から、
「魔法は詳しいですか?」「中級魔法は使えますか?」「モンスターを魔法で倒した事はありますか?」
等の、ノートルダムらしい質問までさまざま。
うん、色んな質問から、俺の教える方向が判ってきた気がする。
そして、それを教えれば、戦闘派と魔法派と両立派の仲違いも収まるんじゃないかな?
残り5分となったので、質問タイムは終了だ。
よしよし。じゃあ、次回からの方針を話そうか。
「これで質問タイムは終了です。
皆さんのお陰で何を教えたら良いか、判りました。
皆さんに俺が教えるのは、冒険者です」
「「「「「冒険者?」」」」」
「そう。冒険者。
冒険者っていう職業は知ってても詳しくは知らないと思います。
詳しく知っていても、体験した事は無いでしょう。
まずは勉強して知ってもらいます。
その後は、実際に冒険に出ます!」
「「「「「お~~~~!!」」」」」
感銘してもらえた。
さすがに学校じゃ、実地研修までしないだろうからね。
俺はやりますよ。だって、実地とか実験とかが、授業で一番面白いじゃん?
どうせもうすぐ大森林にも入れるようになるしさ。
ダンジョンじゃなくても森に行けば良いんだよ。
危険じゃないかって?
大丈夫、運を使っておくから! 無茶苦茶安全だぜ!




