馬と馬車
今、俺の全財産は726万円。
何も考えずに来たけど、これで買えるのか?
「あの~、予算は700万までですけど……」
「了解。馬が2頭で200万だ。500万のコーチか……ちょっと待ってろ」
どうやらコーチは高いらしい。
人が乗る用に作られているから当然かもしれないが。
車だって高級車になれば高いもんね。
予算オーバーなら荷馬車に変更してもらおう。
「待たせた。今入荷したばかりのコーチがある。御者の席が2席と中に6席の8人用だ。
まだ片付けも掃除も点検も整備もしてない。全て終われば700万はする物になるだろう。
今の状態で良ければ500万で売る。どうだ?」
「本当ですか? 見せてもらえますか?」
「了解。こっちだ」
店員さんに付いて行くと、店の裏に出た。
そこには色々な形の馬車が置いてあった。
「ほら。これだ」
店員さんが示したコーチは、なかなか立派な物だった。
ボディは白色に塗装してあり、車輪は赤色、何よりも鉄の板バネが付いてる! サスペンションだ!!
片側に2枚のはめ込みのガラス窓があり、扉は左側と御者席側に付いている。
後ろには少々の荷物なら積めるように荷台があった。
中は3人掛けのソファが対面でセットされている。バネが入っているのか、座り心地は非常に良い。
つい最近まで使ってたのだろう、足元にはゴミが落ちていたり窓に手形が付いているが掃除すればいいだろう。
こりゃ掘り出し物だ!! 綺麗にして700万と言うのも納得出来る。
「納得しました。これを買います!」
「了解。次は馬だ」
放牧地に行くと、店員さんが指笛を吹いた。
わ~凄い! 馬がちゃんと集まってくる!!
「この中から2頭選べ」
う~ん、そう言われても馬の良し悪しが判らない……。
キョロキョロしてると、1頭の馬と目が合った(気がした)。
その馬は茶色の馬で、額に白い毛が*のように生えていた。靴下を履いているみたいに4本の足先も白い。
うん、カッコイイじゃないか! 1頭はこの馬に決まりだ!
「1頭はその馬にします」
「了解。この馬は牝馬だ。もう1頭も牝馬が良い」
だから区別が付かないって!
さっきみたいに特徴のある馬を選ぶくらいしか手が無い。
選んだ上で牡馬か牝馬か見てもらおう。
またキョロキョロと馬を見る。
あれ? 何か我関せずと言わんばかりに1頭だけ草を食べている馬がいる。
じっと見ているとその馬は顔を上げてコッチを見てきた。
この馬も茶色だけど、額から鼻の所まで線のように白い毛が生えている。
うん、コイツでいいや。
「もう1頭はあの馬で」
「了解。あれも牝馬だ。問題ない」
「そうですか。良かったです」
「2頭とも名前が無い。名づけてやってくれ」
またムチャ振りを!
名前付けるセンスなんか無いよ!
競馬にいる馬の名前を付けるか? いや、競走馬を知らない……。
う~ん、馬車の時代……ヨーロッパ……イギリス……あっ!!
「額に*がある馬の名前は『銀星号』、もう1頭は『ショスコム』にします!」
「?? 了解。じゃあ手続きするから受付に戻ってくれ」
受付に戻って売買契約をし、700万払った。
やべぇ、武具を買いに行く為に馬車を買ったのに金が無くなるという、本末転倒な事に……。
残金26万で武具が買えるか?
それ以前に旅が出来るのか?
どうしよう……。
馬名ですが、判る人には判ると思います。
シャーロックホームズ、好きなんです。




