助けて、閻魔様!
リビングに向かったのだが、その前にトイレに行こう。
「すみません、ちょっとトイレに……」
「後にしたらどうだ?」
「会って話の途中で行くよりは良いでしょう?」
「んん……まぁそうか。早くしろよ」
「ええ。すぐに向かいますので、先に行ってください」
これで良し。
さすがにトイレにまで付いて来られたくない。
別にもよおした訳ではない。
ちょっと危険を感じたので、先んじて手を打っておこうというだけだ。
各国の王様も居るし、自由気ままにされたら困るからね。
トイレに入って鍵をかける。
聞くかは判らないが、魔法の『コンシール』と発動する。
これは気配と匂いと音を消す魔法だ。
本来なら隠密行動に使う魔法だけど、内緒話にも有効だろう。
今回は確実に連絡を取りたいので、加護を使う。
相手は勿論、閻魔様だ。
加護で「連絡してください!」と伝えた。
タブレットを手に持って待つ事、2分。
やった! 閻魔様からの連絡だ!
「どうした、福田君」
「助かりました! 待ってましたよ、閻魔様!」
「なんだ、なんだ? どうした?!」
「十二神がうちに来てるんですよ!」
「なんと?! マジか?!」
「マジです!」
閻魔様も「マジ」なんて言葉が出るくらい混乱しているようだ。
許可出したの、閻魔様ですよね?
「何で許可したんですか?!」
「いや、有給の届けは受けたが、君の所に行くとまでは聞いてないぞ?」
「何でまとめて許可したんですか?!」
「いやぁ、ぶっちゃけ、十二神なんて言われてるが、全員問題児なんだよ。
問題児12人って言うと聞こえが悪いだろ? だから十二神って呼んでるんだよ。
で、問題児だから、そんなに仕事をさせられないだろ?
纏めて休んでくれるなら仕事が邪魔されずに捗るから、許可を出したんだ……」
「その問題児が全員来てますけど……」
「ス、スマン……」
おっと予感的中だぜ!
最悪パターンじゃないか!
どうやったら回避出来るんだ、これ。
「助けてくださいよ! 絶対俺の言う事なんか聞きませんよ?!」
「そうだろうなぁ……。良し! 今から送るから受け取れ!」
「えっ? 何を?」
「説明しづらいから、受け取ってから確認してくれ!
それと1人呼んで来るから少し待て!」
「あっ! 閻魔様?! ちょっと!!」
バタバタと閻魔様はどこかに行ってしまった。
誰かを呼びに行くらしいけど。
取り締まってくれるような人をこっちに送ってくれるのだろうか?
1分程で閻魔様は画面に戻ってきた。
確かに誰かを連れてきている。
黒髪のロングで黒いローブを着ている男の人だ。
「何ですか、説明もせずに連れてきて。私も忙しいのですよ?」
「いや、非常事態なのだ!」
「何があったのですか」
「世話になってる人間の下に十二神が全員行ってしまったのだ……」
「なんとまぁ……それは大変ですね」
「だからな、保護する意味でもお前の加護を与えてやってくれないか?」
「……あのですね。加護なんて、そんなにポンポンと気軽に与える物じゃないのですよ?」
あっ、何か凄く神様らしい神様だな。
出合った神様の中でもトップクラスだ。
「こいつは大丈夫だ! 悪用する事も無い!」
「だからといって、判りましたとはなりませんよ」
「あの~、すみません」
「どうした、福田君」
「どちら様でしょうか?」
「福田? ……あぁ、聞き覚えがありますね。誘拐事件の功労者だったと記憶してます。
初めまして、福田君。私はカオスと言います」
カオス!!
さすがに俺でも知ってるぞ! 混沌って意味だよね!
その元となった神様じゃないですか!
「も、もしかして、閻魔様クラスですか?」
「なかなか物知りですね。その通りです。私は生まれ変わる人を送り出す側の管理をしています」
うわっ、トップクラスの神様だー!
逆らってはいけない神様の一人じゃないですかー。
だって、この神様の一言で、次回の人生の良い悪いが決定するんですよ?
裕福な家に生まれるのか、紛争地帯に生まれるのか、はたまた虫として生まれるのか……。
お、恐ろしいな……。




