電気の話
「しかしだな……」
あっ、再起動した。
あれから10分、皆停止したままだったからね。
その間、俺は自分でお湯を沸かしてお茶を入れてきて、出していた菓子を食べていた。
うん、この丸いふわふわしたお菓子は美味い。
「この事態、想像を遥かに上回っていた」
「そうだな、半分は冗談だったのに」
「本当に福田君には逆らえないわい」
冗談だったのかよ! そして逆らう気があったのかよ!
「確かによくよく考えれば不思議な事ばかりだ」
「どういう事じゃ、ノートルダムの」
「例えばこの部屋。天井に明かりが付いていますが、これは魔法ではありません」
「はぁ?! ではロウソク等の火だと言うのか?!」
「それも違います。魔力の反応が無いので魔法では無い事は確実です。
しかし、このような物は見た事もありません」
「コルラド国の、おぬしはどうじゃ?」
「確かにこんな魔法道具は知りませんな」
誰も知らないだろうなぁ。
だってこれ、LED照明なんだもん。
コンピューターを設置する時に、神様が照明とかまで改造していったんだよね。
仕組み? 当然電気ですよ。
島の一角に巨大なソーラー施設が作られてます。
こちらは異世界の人間を呼んで設置させてた。
「なんでソーラー施設は異世界の人を呼んで設置したんですか?
コピーじゃダメなんですか?」
「太陽の向きを考えて設置しないとダメなんだよ。
だからこればっかりは専門家じゃないとね」
「そんなもんですか?」
「それに電気を扱うのは素人じゃダメ。危険過ぎるよ。
教えてもらったくらいじゃ設置なんか無理だしさ」
へ~、そうなんだ。ラノベじゃあ簡単に設置したりしてるけどなぁ。
まぁ、確かに日本じゃ電気の資格が無いと取り扱い自体出来ないしね。
太陽の向きとかまで考えて設置なんて、素人じゃ無理だよな。
ただパネルを置けば良いんじゃないんだね。
「それにさ、蓄電のシステムも設置するから、よけいに危険なんだよ」
「蓄電?」
「ソーラーパネルは昼にしか発電しないでしょ?
だけど主に電気を使うのは夜。じゃあ電気は貯めておくしかないよ」
「なるほど」
蓄電装置か。その発想は無かった。
うん、知識も資格も無いのに、蓄電装置なんか触りたくもないな。
こんな物、説明書があっても設置したくないね。
感電するかもしれないし、雨が降ったら漏電なんて事態もありうる。怖い。
こんなの設置したラノベ主人公、それだけでチートだわ。
しかし、じゃああのコンピューターは、電気で稼動してるのか?
意外に旧式っぽいな。
と、まあ、こんな感じで設置されました。
大人数連れてきて、人海戦術を使い短時間で設置してたよ。
その人達は、記憶を改竄して送り返したらしい。怖い話だ。
「これは『電力』というモノです。太陽の光を使って作ってます」
「ではこれは太陽の光なのか?」
「いえ、そうではなく……えっとどう説明したものか……。
あっ、魔法で『サンダー』ってあるでしょ!」
「あ、あぁ、雷を落とす魔法だな。上級魔法だ」
「雷って電力なんですよ。それを使ってると思ってください」
正確には電力じゃなくて電気なんだが。
それを言うとまた説明しなきゃいけないので、黙っておこう。
「しかしだな……」
「そういうモノだと思ってください!
どうせここにしか無いんだから、覚えてもムダですから!
宿泊する部屋にも付いてるので、各々でチェックしてください。
あぁ、変にかまうと雷に打たれたようになるので止めてくださいね」
「そ、そんな危険なモノなのか?!」
「でも便利ですよ? ほら」
そう言って、壁にある照明のスイッチを押す。
すぐに部屋は暗くなる。
またスイッチを押して明るくすると、またもや全員が止まっていた。
やっちゃったか。今度の再起動は何分後だろうな?




