USB
この後、俺は城から帰った。
王様には「神様と約束したので」と言ったらすぐに帰りなさいと言われた。
最後に「サミットで会おう」と言われたので一応釘を刺しておいたが。
「俺も参加するらしいので、サミットで運を使わないでくださいよ?
自分の発言を有利にしたり出来ると思うんですが、さすがにそれはヤバいと思うので。
まぁ、もしそんな使い方したら、神様に何を言われるか判りませんが」
「絶対に使わない。福田殿に命令されても使わないから」
何で俺が王様に命令するのだろうか?
立場が逆じゃない?
家に着くと、すでにルシファーさんが待っていた。
早いね~。アサイさんはどうなったのだろうか?
「アサイかい? 他の仕事をやらせておいたよ。
そう、世界大戦が起きてる世界で加護を回収してくるっていう仕事。
加護持ちは能力が高いから最前線が多いんだよね~。大変だね」
「そんな状態なのに、加護を取り上げて良いんですか?」
「良いんだよ。どうせ滅ぼす事が確定している世界だからね。
だから、本当は回収しなくても戻ってくるんだけどさ。ま、これも仕事だよね」
うわ~。ドン引きです。
死ななきゃ良いけど。
まぁ、あの人の事だ。ボロボロになりながらも帰ってくるだろう。
せいぜい爆発を食らって、頭がアフロになるくらいじゃないか?
「まあまあ、アレの事は良いじゃないか!
それよりも福田君に渡すもんがあるんだよ!」
「……なんでしょうか?」
「まず、島と船が異世界になっててゴメンね? いや~失敗失敗。
で、そこに行けるようになる為に、この世界で使われている『門のシール』を改造出来る物を作りました!
じゃじゃーん、これがそうです!」
そう言われて渡されたのは、ピコピコハンマーだった……。
えっ? これでどうしろと?
「これで『門のシール』を叩けば、島にも船にも行けるようになりま~す!
いやぁ、設置した物にも干渉出来るようになる物を作るのは大変だったよ」
「つまりは貼ったシールをこれで叩けば良いんですね?」
「うん。ただし、全部をしておいてね」
「受け側だけじゃダメなんですか?」
「う~ん。判りやすく言うと、パソコンのUSBかな。
3.0のスロットに2.0のを差しても2.0の速度しか出せないでしょ? それと同じ」
「え~と、良く判りません……」
「スーファミにファミコンのソフトが入らないのと同じだよ」
う~ん、判ったような判らないような。
ただ、ファミコンの話は違うって事だけは判るぞ。
適当に話してるでしょ。
「ブルーレイプレイヤーでDVDは見れるけど、逆は出来ないのと同じ」
「う~ん……」
「とにかく、規格が変わるから、違う物同士は繋がらないの!」
「最初からそう言ってくださいよ!」
「ハハハハハ」
笑って誤魔化したよ。
大丈夫かな。これ、ちゃんと機能するよな?
それにしても全部を叩いて回らなきゃいけないのか。
面倒だな。
いや、全部しなくても良いのか。
島や船に行く事のあるやつだけを叩けばOKだね。
家に設置したやつとか転移板のやつで十分かな。
しかし、これって、一応神器になるのかな?
ピコピコハンマーが神器……。
まぁ、フライパンやお玉を神器と言った俺が文句を言える立場じゃないけど。
「それとさ、福田君。
今回迷惑をかけたお詫びをしようと思ってるんだ」
「お断りします」
「何でよ!」
「いえ、今までの経験上、困る事態になりそうなので」
「良い事だから! 困らないから! っていうか、もう実行したから!」
「何したんですかー!」
「お詫びとして、福田君の馬車も異世界に改造しましたー! テヘッ!」
テヘッ、じゃないだろ!!




