運の使い方、実践1
「ここまでは判りましたか?」
「う、うむ、大丈夫だと思う」
「では、練習してみましょう」
「れ、練習?!」
「ええ。使ってみるのが、一番早く覚えられますから。
そうですねぇ。丁度ここに実験台が居るので練習してみましょう」
「えっ? 私の事?! ふふん、やってみなさいよ。
世界が違う人には運なんか通用しないんだから!」
「福田殿、こう言っておられるが、どうなのだ?」
はっはっは、そんな事は知ってるさ。
だが、俺は色々検証した結果、間接的には通用すると確信しているのだ!
「確かに世界が違う人には通用しません。
世界が違う人ってのは、神様とか悪魔とか異世界人とかです。
ですが、直接は出来なくても間接的には出来るのです」
「それはどういう事かね?」
「実際にやってみましょうか」
そう言って、俺はマジックボックスから小さい饅頭を出す。
そう、これは以前サキを引っ掛ける為に作った『からし入り饅頭(6個入り)』だ。
ヒタキさんが本当に商品化してしまった。
王都ではこれが流行ってるらしい。
その売り上げだけで、うちで働いている人達の給料が払える程に儲かってるそうだ……。
これはサンプルとして貰った物だが。
今度は前に作ったジェンガを売り出す気らしい。
ヒタキさん、恐ろしい子!
ここからはアサイさんに聞かれたらダメなので、王様にだけこっそりと伝える。
アサイさんまで運を使ったら意味無くなるからね。
「この6個の内、1つにはカラシが入っています。
普通に3人で交互に食べていった場合、当たる確率は33%です。
ですが運を使えば、アサイさんに食べさせる事が可能になります」
「食べれば不幸だからだな。しかし運が通用しない相手にどうやって食べさせるのだ?」
「そこです。
普通は『アサイさんが食べますように』と願えば成立します。
だが、相手は運が通用しない悪魔です。それでは成功しません。
そこで、間接的に効果を出すのです。こう願ってください。
『自分がカラシ入りを食べませんように』と」
「なるほど。それで自分は当たらなくなる。逆にアサイ殿は当たる確率が66%になるのか」
「そうです。そこでさらに俺が同じ事を願ったらどうでしょうか?」
「なるほど! 福田殿も当たらないとなると……100%になる訳だな?」
「結果として、成功するという訳です」
ちなみに、これは実験の意味もある。
運を操作出来る人間が2人居たとして、両方とも作用するのか、という疑問。
両方共作用した場合、運の消費量に変わりはあるのか。
それに、俺と王様の運、どちらが強いのか。
俺の方が運が多いし運力のランクも上。
だが、同時に使った場合に差が出るのか。
こういう実験を密かにやってみたいと考えてるのだ。
なので、俺が願うのは『俺以外がカラシ入りを食べますように』だ。
これで王様が食べる事になれば、俺の運が強い証明になるだろう。
ちなみにこれは市販されている物なので、サキほどの目には合わない。多分。
「という事で、アサイさん、饅頭を食べましょうよ」
「イヤよ! コソコソ話し合いをしてるのを見た後に出された饅頭なんか食べる訳ないでしょ!」
「いやいや、俺達も食べますよ? 6個入りだから皆で食べようって事ですよ」
「疑わしいわ! そもそも、福田君が私に食べ物を無償でくれる訳が無い!」
「失礼な。そんな事……無いですよ」
「今、沈黙があった! 絶対そう! 悲しいけど間違いない!」
「え~、美味しい饅頭なのになぁ」
「2人で食べれば良いでしょ!」
「アサイさんの借金も減らしてあげようかな~と思ってたのになぁ」
「え? 本当? じゃあ食べる食べる♪」
チョロい。
チョロさに免じて減らしてあげよう。100円だけ。




