加護加護
「それにですね、父が侘びとして加護を与えるとか言い出すと思うんですよ」
「は、はぁ。
まぁ神様の加護なら変な事は無いと思うんですが……?」
「いえ、加護を与えると言いながら、なかなか与えないと思うんですよ」
「? ん? んん? よく判らないんですけど?」
「つまりは口実なんですよ。
次回来た時に与えるって言って、この世界に顕現したいんです。
加護を与えるのも仕事なので、そういう振りをして仕事をサボる。そういう手口です」
何、それ。
加護加護詐欺?
「でも、与える対象である福田さんに母の加護があれば、どうでしょう?
すぐにバレるので、やらないと思うんですよ」
そういう事ね。
未然に防ぐって考えか。
オレオレって言って来たら「今日警察が非番で家に居る~に替わるわ」って電話で言うみたいな感じ? 違うか。
それはオレオレ詐欺の回避方法か。
「それに従魔の加護があって、困る事は無いですよね?」
「確かにそうですけど。従魔の神様の加護ってどんなのですか?」
「それは私が話しましょう~。
私の加護があるとですね~、従魔のレベルが上がりやすくなるんですよ~。
それとですね~、従魔契約の成功率が上がりますね~。
でもそれは福田君には必要無いと思いますけど~」
「レベルが上がりやすくなるのはありがたいですね。
成功率は、運を使えば成功するので、確かに不要かも」
「……不要って言わないで下さいよ~」
あっ、落ち込んだ。
なんだろう、他の神様よりも人間くさい。
どういう神様なんだろうか?
くそっ、ギリシャ神話を読んでおけば良かったなぁ。
「えっと、失礼かもしれませんが……どういう神様なんですか?」
「え~、普通の神ですけど~?」
「あ~、福田さん。言いたい事は判ります。よく聞かれるので」
「そうなんですか?」
「何よ~、アスクちゃん! よく聞かれるって何~!」
「いいから、ちょっと黙ってて。
母はね、元人間なんですよ」
えっ?! 人間って神になれるの?!
世界が違うんじゃないの?!
「簡単に説明するとですね。
顕現した父と恋仲になってですね、僕を妊娠したんですよ。
なのに浮気したと勘違いされて、他の神様に殺されたんですよ。
閻魔様が調べた所、勘違いと判明したのですが、既に絶命してたので救済措置で神になりました」
「やめてよ~、親の馴れ初めとか話さないでよ~、恥ずかしいじゃない~」
恥ずかしいか?
壮絶な話だったけど……。
ムチャクチャな話だな!
「ちなみにですけどね、その時に浮気したとウソを言ったのがカラスです。
知ってますか? カラスは昔は白色だったそうですよ。
父の怒りを買って、太陽で焼きやすいように黒にされたそうです」
怖い! 怖いよ!
それを楽しそうに言う貴方も怖いよ!
いや、息子からすれば当然か。
母親が殺された原因だもんな。
「って事で、加護を貰ってくれますね?」
「は、はい」
「ついでに、この屋敷に居る、ヒタキって人に僕の加護を与えましょう。
そうすれば福田さんが居ない間に侵入しても発見出来ますから」
「え~と、どんな加護ですか?」
「僕は医療の神です。
その加護が得られると、医療系の『技術』が向上しますね」
わぉ、ヒタキさんが更に万能になりますね。
ま、それで困る事は無いので、ありがたく貰っておきますけど。




