魂へのダメージ
諦めた割には往生際が悪い。
まぁ今回のだけならバレても良いが、過去もとなると話が違うんだろうな。
でも魂に直接ダメージを与える仕組みになっているんだろ?
大丈夫なのかな?
そうなった場合、どうなるのか判らない。
多分だが、1問くらいはダメージを受けても大丈夫と楽観視してるんじゃないだろうか?
「今まで、『バレたら言いくるめれば良い』もしくは『目撃者は消せば良い』等を考え、買収等の犯罪をしてましたか?」
という俺の質問に対して回答すれば賭博罪だけじゃすまないだろうからね。
それなら1回ダメージを受けた方がマシという算段かも。
なんて考えてたら、時間切れになった。
貴族を見るが、別段変化は無い。
貴族もそれに気づいたのか、ニヤリと笑った。
だが、次の瞬間、その顔は痛みで歪んだ。
「ギャアアアアアアアアアアアア!!!!」
「愚かな。魂にダメージを受けるという事は、精神と肉体にダメージを受けるのと同等。
しかもまだ生者だ。死んだ方がマシな苦痛を感じているだろうな」
誰もがドン引きです。
まぁそのお陰でアポロン神が喋った事を誰にも聞かれなくて済んだんだけど。
今の内にもう少し詳しく聞いておくか。
「生者で魂にダメージを受けると苦痛を感じるだけですか?」
「どうだったかな? その他にもまだあったはずだ。
ええと……おお、そうそう。まず持っている運は全て回収される」
「全回収?!」
「そうだ。福田は行った事があるだろうから知ってると思うが、運は元々100ポイント貸し出しだ。
それを全て回収される。だから今後何をしても増減する事は無い。
というより、運という概念がそいつからは消える」
怖い!
運に頼ってきたから、その怖さが凄く判るわ!
死ぬような事も、事前に運が作用して回避してる可能性もあるのに、それが無くなる?!
絶対死ぬぞ、この人。
「それから、カルマが減る。1回のダメージで10くらい減るんじゃないか?」
「そんなにですか……」
「こいつは死んだら、えげつない所に行く事になりそうだな」
神様がえげつない所って言うくらいだ。
とんでもない所なんだろうな……。
地獄なのは確定だろうけど、さらに下があるのかも……。
貴族はその後、絶叫しながら5分ほど転げまわっていた。
それを見ていたアポロン神は、何かを閃いたのか貴族に近寄り耳元でささやいた。
「おい。この後、お前は尋問されるだろ? その時は全て素直に答えろ。
答えない場合は、今のが楽だと思うくらいの苦痛を味あわせてやるぞ? 良いか?」
「ヒィィィィ! わ、判りました!!!」
「王よ、これで判っただろう。どうにかしろ」
「は、はい! 判りました! 近衛兵を呼べ! ここに居る全員を逮捕し尋問する!」
それを聞いて慌てて兵士の人が走っていった。
事態を収拾するようだ。
「しかし、アポロンさん。何で終わらせようとしたんです?
そんなにこの国に思い入れは無いでしょ?」
「簡単な事だ。この事態が終息すれば、お前はフリーになるだろ?」
うぐっ! そうだった!
まだ、アポロン神との話ってイベントが残ってたんだった!
俺達は王様と共に最初の指定席へ戻る事に。
あの場に居ても邪魔になるだけだからだ。
当然ながら、今日のレースは全て中止になった。
これから騎手に接触されない方法を模索するだろうね。
指定席へ戻ると、そこには1人の人物が待っていた。
誰かと思ったら、イイクラさんじゃないですか。
どうしたの?




