王様に質問する
王様は震えながらも、その機械を手に持った。
神様は遠慮無く近寄り、赤いボタンを押す。
「どうだ? 手が離れないだろう?」
「んんっ! はい、離れません……」
「よし。正常に稼動してるな。長い間放置してたから不安だったが、問題無いな」
「こらっ! 起動してから不安な事を言うんじゃない!」
「問題無いのだから、良いだろ? ほら、福田よ。何か質問してみろ」
なんといういい加減さ!
しかも俺に質問しろと言うし。
まぁ、10個質問しないと終わらないのだから、質問して早く終わらせてあげよう。
「じゃあ……そうですね。貴方は男ですか?」
「はい」
ピンポーン
あぁ、これがチャイムね。
こうなるとブザーも聞いておいた方が良いか。
「じゃあ、次は必ず『はい』で答えてください。
貴方はニーベル国の王様ですか?」
「はい」
ブブー
これがウソを言った時の音ね。
さて、後8問か。
何を質問しようか。
「目の前に居るアポロンは神様と信じましたか?」
「はい」
「この国に腐敗した貴族が居る事を知ってましたか?」
「いいえ」
「国技は上手くいってますか?」
「はい」
「何でこの神様は突然来たんだろう、迷惑だなと思ってますか?」
「いい……はい」
ここまで全てピンポーンと鳴っていたので、真実なのだろう。
しかしそうだよな、やっぱり迷惑だよなぁ。
王様も誤魔化そうとしたけど、どうせバレるならと思ったのか素直に答えたね。
噂の神様は不機嫌そうな顔をしてるけど。
この後、無難な質問を4問して終了。
稼動には何の問題も無いようだ。
俺は王様から機械を受け取り、神様に渡す。
「で、確認は出来ましたけど、この後どうするんです?」
「乗っていた騎手をこれを使って質問するのだ」
「そういう事ですか」
「そうだ。ほれ、王よ、行くぞ!」
「は、は、は、はい!」
事情を知っているこの部屋の者は、全員移動する事になった。
不正を指示したイモ貴族もである。
本当は逃げたいんだろうけど、神様相手じゃ逃げようも無いよな。
地獄の時間だろうなぁ。
そのまま騎手の待機場所へ到着。
5レースに騎乗してた6人が集められた。残りの2人は看護室だ。
いきなり王様が来たからなのか不正をしてたからなのか判らないが、全員が挙動不審だ。
そこに王様が話をする。
「今回、レースを見ていたこちらのか、いや御仁から本気で走ってないという指摘を受けた。
なので、今からチェックを行う。拒否権は無い。1着だった者よ、これを両手で持て!
さ、福田殿。渡してやって下さい」
「はいはい」
「すみません、王様。これは……?」
「これはウソを見破る装置だ。この御仁から貸していただいている。
真実を言えばピンポーンと、ウソを言えばブブーと鳴るからすぐに判る。
黙っていると……」
「黙っていたらどうなるんですか!!」
魂にダメージを与えるって言ってたけど、それはどうなんだろうね?
さすがに王様も説明しにくいのだろう。俺を見てくる。
いや、俺も知らないから!
適当な事言っておけば良いでしょうに。
しょうがないので、俺が代わりに答えた。
「黙ってたら呪いを受けます。どんな呪いかは判りません。
徐々に体が動かなくなっていくような呪いかもしれませんね……」
騎手の人達の顔色が青を通り越して白い。
まぁそうだよな。
答えれば不正発覚。黙ってれば呪い。王様を前に逃げる事も出来ない。
完全に詰みの状態だ。ご愁傷様です。




