アスク
王との話し合いも終わり、設置した『門のシール』を使って家に戻る。
それから、扉を使って船へ。
本当に、これをどうにかしてもらわないと不便だわ。
チョロもまだ戻ってこないので、今の内に神様に連絡を取る。
「おや、福田さん。どうしました?」
「どうも、イイクラさん。ルシファーさんは居られますか?」
「多分業務部屋に居られると思いますが」
「代わってもらっても良いでしょうか?」
「良いですけど、要件は何でしょうか?」
「あのですね、船を改造してもらったのは良いのですが、転移が使えなくなってて不便なんですよ」
「そういう事ですか。判りました。少々お待ちを」
「ありがとうございます」
少し待っていると、ルシファーさんがタブレットに登場。
「やあ、福田君。何か不具合だって?」
「ええ。船が魔法を完全にシャットアウトしてるので、転移が使えないんですよ」
「えっ? 扉が動かないかい?」
「いえ、扉は良いんですよ。この世界の魔法の『コネクト』の方ですね」
「あぁ、なるほど! それは想定してなかったね!
ちょっと考えてみるから、待ってもらえるかな?」
「お願いします」
そうやって話していると、遠くから何か声が聞こえてきた。
何か騒ぎになっているようだ。
何かあったのだろうか?
「ルシファー! 相手は福田とかいうやつなんだろ?! 代われ!」
「待て待て。お前が何の用があるんだよ?」
「重要な用事があるんだよ! 代われ!」
どうやら俺絡みのようだ。
誰だろうか?
まぁ、誰だろうと、もう神様絡みは遠慮したいのだが。
「貸せって、ルシファー!」
「ああもう。悪いけど福田君、ちょっと話をしてやってくれ」
「は、はい」
「俺はアポロン。お前が福田だな。
閻魔様に言われて仕事をしたのに、俺のダンジョンに来ないとは何事だ!」
「えっ? 行きましたよ?」
「来なかったじゃないか! 俺はあの日、俺の像の前で12時間も待ったんだぞ!」
「……ちなみにその像は、何階に設置されてるんです?」
「2階だ!」
「あ~、1階には行ったんですけど、事情があって引き返したんですよ」
「アスクの所に行って帰っただと?!」
12時間も待ってたのか……。ヒマなのかな?
それに待ってるんなら教えてくれないと判らないよ。
ところで、アスク?
あの像はアスクって神様の像なのか。
アスクって誰?
「アスクって誰ですか?」
「ん? アスクは息子だ。正式にはアスクレーピオスという」
「はあ……」
「知らないのかよっ! 医療の神だぞ?!」
「えっと、判りません。すみません」
「なんとも嘆かわしい! 有名じゃないのか?!」
「えっと、聖王国ではダヒュテムの像と勘違いされてましたよ?」
「はあ?! あんなバカと間違えるとは許せんな! 滅ぼすか!」
「コラー! アホな事言ってるんじゃない!」
「離せ、ルシファー! どう考えても許される事じゃないだろうが!」
「そうだけど、だからって滅ぼして良い事にはならないだろ?! 閻魔様に報告するぞ?!」
ルシファーさん、頑張って!
別に思い入れのある国じゃないけど、滅ぼす必要は無いと思うんだ。
「閻魔が何だ! かまうものか!!」
「じゃ、じゃあコローニスに言うぞ! 良いのか?!」
「……ちょっと待とうか。嫁に言うのはおかしくないか?」
「お前の暴走を報告するぞ? 良いのか?」
「……ゴホン。話を戻すとしてだ。福田君に用事があるのだよ。あってもらえるかね?」
「は、はぁ……。えっと奥さんと一緒になら良いですよ?」
「ぞこで何故嫁が出てくる?!」
「良い考えだ、福田君。私から連絡しておこう」
「ちょっと待て、ルシファー! 連絡しなくて良いから! ちょっと待てってば! お」
あっ、切れた。
まぁ、用件は伝えたから良いけどさぁ。
奥さんの事を言えばおとなしくなるのか。覚えておこう。




