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語尾

「決闘と言いましたが、今やります?

 武具は持ってるのですぐでも大丈夫ですよ。ちゃんと毒消しの魔法も覚えてますし」

「今すぐじゃない! それに戦うとは言ってないだろうが!

 毒消しってなんだ?! 毒か?! 毒を使う気か?!」

「じゃあ決闘じゃなくて勝負じゃないですか。

 言葉はちゃんと使いましょうよ。貴族なんだから。言質を取られますよ?」

「小賢しいやつめ。勝負はお前の進言で作られた『ばんえい競馬』で行う!」

「あぁ、賭けで勝負ですか。良いですよ。それなら勝率100%なんで」

「ふん! そう言っていられるのも今のうちだけだ!」


いや、事実なんだが。

ジャガイモが異世界人か神様を連れてこない限り勝てる。


「で、何を賭けるんです? どうせ何かを賭けるんでしょ?

 利権ですか? 財産? 名誉? 地位? それとも命?」

「本当にバカにしてくれるな……。

 では貴様の言う通りにしてやろう。貴様の持っている利権と財産を賭けてもらおうじゃないか」

「良いですよ。何なら契約書も書きましょう。

 で、そっちは何を出すんです? 釣り合いの取れる物じゃないとダメですよ?」

「ふん! では伯爵の地位を賭けてやろう」

「ふ~ん……まぁいいでしょう。それで決定ですね。で、いつやります?」

「明後日だな。その2日の間に逃げるなよ?」

「そっちこそ」


何で逃げる必要があるんだ。

そもそもさ、地位を賭けてきたけど、それって王様から任命されてるんじゃないの?

勝手に変更出来ないと思うんだ。ま、だから賭けてるんだと思うけど。

万が一負けても、そういうのを理由にして現在の地位に残るつもりだろ。


ジャガイモはそれだけ言うと、大股で歩いて去っていった。

おい、場所とか時間とか言っていけよ。

お前の方が偉いから、俺が合わせろって事か?


ま、勝手に連絡してくるだろ。

待てよ? 来なくて不戦勝とか言い出す可能性もあるか。

俺は従魔を呼び出す。


「チョロ、ちょっと頼みがある」

「なんでしょう?」

「さっきここを去っていった~~伯爵ってのがまだこの先に居ると思うから、隠れて追いかけて欲しい。

 で、俺に関する事で何を喋ったとか何処に行ったとか報告して欲しいんだ」

「了解しました!

 あっ、間違えた。了解チョロよ!」

「……ちょっと待て。誰だ、語尾をそうしろって言ったのは?」

「そこにいるナグラ嬢チョロよ」

「……やっぱりか。しなくて良いから! 普通に喋って!」


振り向くと親指を立ててグッとしているナグラさん。

俺と目が合うと、慌てて手を降ろし目線を逸らしたけど。

ホント、碌な事教えないね、君!


チョロは消えながら飛んでいった。

これでジャガイモの動きは把握出来るだろう。


「だ、大丈夫なんですか?」

「ん?」

「貴族にあのような言動で大丈夫ですか?」


俺を心配してるのは、案内をしてくれている兵士さんだった。

カンダさんはと言うと、苦笑している。

ナグラさんなんかは、誤魔化すのに一生懸命だ。口笛、鳴ってないぞ?


「大丈夫ですよ。さあ、王様の所に行きましょう」

「あぁ、王様に進言されるのですね!」

「いやいや、言いませんよ。面白くないじゃないですか」

「ええ~?!」

「福田さん、福田さん」

「何よ、カンダさんよ」

「また悪い顔してますよ」

「えっ? そうかい?」

「何か企むのは良いですけど、バレるのでもう少し抑えましょうよ」


企むのは良いのかよ!と思ったけどさ、腹が立ったのはカンダさんも同じなんだろう。

任せて! 立ち直れないくらいヘコますから!!

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