いも?
兵士さんに案内されながら城を進んでいると、前から共を連れた人が歩いてきた。
それを見た兵士さんがこっそりとこちらに話してくる。
「コジマ伯爵です。お気をつけを」
「ん?」
気をつけろって何?
あぁ、ラノベとかでよくある難癖つけてくる貴族ってやつか?
ま、大丈夫だと思うけどね。
なんせ、こっちのバックは王様だし。
威を借る狐? 当然です。
この廊下、幅は3mくらいある。
その広い廊下の真ん中を歩いていたのだが、すれ違う為に右側を歩く。
歩行者は右側通行だからね。日本ではだが。
すると伯爵も右側に寄ってきた。
どうやらこの世界では左側通行のようだな。
なので、左側を歩く。
すると何故か伯爵も左へ。
これはアレか。
こっちが避けようとしたら向こうも同じ事を考えていて、最終的にぶつかりそうになってジャンガジャンガ。
何て考えてたら、目の前で伯爵は止まっていた。
何だ、ジャンガジャンガしたかったのに。
って伯爵は知らないか。
今日付いてきてるのがナグラさんなら判ってもらえたのになぁ。
「貴様が福田か」
「いえ、違います」
「そうだろう……ん? 違うのか?!」
「ええ。違います」
「んん?! いや、貴様は福田だろう! 競馬場で見たぞ!」
「違いますって、コダマ伯爵」
「コジマだよっ!」
あれっ? 間違ったわ。
それにしてもなんだろう、このイジリたくなる伯爵は。顔かなぁ。
「貴様のせいでワシの面目は丸つぶれなのだ! 許さんぞ!」
「何を言ってるんですか?」
「国技の事だ! 知らないとは言わせないぞ!」
「知りません」
「言わせないと言ってるだろうが!」
だって、本当に知らないし。
俺が適当に言った話に王様が乗っただけだろ?
「ワシが出した国技に決定しかけていたのに、貴様が横槍を入れて来たのだ! 覚えているだろう!」
「覚えるも何も、知らないんですって。え~……伯爵」
「今、名前を言おうとして、忘れてたから誤魔化しただろう?」
「……そんな事は無いですよ」
「じゃあ名前を言ってみろ」
「福田です」
「貴様の名前じゃない! ワシの名前だ!
というか、やっぱり貴様は福田じゃないか!」
「人違いですよ……サジマ?伯爵」
「コジマだよっ!」
まんまと誘導尋問に引っかかってしまった。
やるな! え~と、え~と、ホニャララ伯爵!
「こいつめ……! ワシをバカにしおって! 決闘だ!」
「血糖? 最近計ってないから知りませんけど、そんなに高く無いはずですよ?」
「誰が血糖値の話をしている!」
「貴方ですよ、メークイン男爵」
「コジマだよっ! 伯爵だしっ! ワシはジャガイモかっ!
違うわっ! 決闘だ、決闘!」
「う~ん、面倒なので、パスで」
「面倒ってなんだ! パスって言うな!
貴様、ワシに逆らうとは良い度胸だ! お前が懇意にしているチンケな食堂を潰しても良いのだぞ!」
何だと、この野郎。
ジャガイモのくせに偉そうに。
こういうヤツは王様に言いつけても、上手く誤魔化しそうだな。
痛い目を見せないと判らないだろう。
いや、ラノベとかでは痛い目を見せても、さらに逆恨みするだけだ。
反撃する気力も無くなるくらい落としてやる!
「良いでしょう。その決闘、受けましょうか。え~と、コジマ伯爵」
「コジマだよっ!」
「だからそう言ったでしょう」
「……」
まずは1本っと。
さて、どうやって苦しめてやろうか。クックック。




