ニーベル国の褒美
これでニーベル国での用事も終わりだ。
さっ、次はコルラド国だね。って思ってたら、ネモト卿に引き止められた。
「福田さん。サミットの褒美は考えられていますか?」
「えっ? いや、全然。と言うかですね、そういうのはそちらが考えるのでは?」
「良い案なんかある訳無いじゃないですか。
長い付き合いなんで、何を欲しているのか判りますよ」
「じゃあ良いでしょ?」
「判るから困るのです。何も欲してないでしょ?!
なのに何かを出さなければならない。これほど難しい事は無いですよ?」
確かに今、ニーベル国に求める事は特に無い。
特に困ってる事なんか無いしね。
「そう言われてもですね。別にこれと言う物が無いんですけど」
「それじゃあ困るんですよ。各国が出す中で、我が国だけが何も出さないというのは問題です」
「え~、じゃあお金で良いです」
「渡せる物が無いからとお金を渡すというのはどうでしょう……」
え~、ダメなの?
簡単な解決方法だと思ったのだが。
欲しい物ねぇ……。
あっ! 前に思ってた車はどうだ?
いや、今となってはそんなに欲しくないな。
待てよ? 移動方法か。
技術的に不可能な飛行機とかは別として、何か移動方法を考えるか。
それなら……。
「こういうのはどうでしょうか?
『俺が提案した事をサミットで話してもらう』ってのは?」
「福田さんにもサミットでは提案する権利があると思いますけどね」
「無いですって!
それより俺が言うよりもどこかの国が提案した方が良いですよ」
「そうですか? まあ聞きましょうか。どのような提案です?」
「昔考えたんですけど。
『門のシール』を一般解放するんですよ」
「ええっ?! 危険ですよ?!」
「いや、誰にでもって事じゃないですよ?
まず転移場所、そうですね停留所としましょうか。停留所を作るんです。
で、その停留所と停留所を繋ぐんですよ。で停留所を一般の人に使ってもらうんです」
「ふむふむ」
「停留所は主要都市に設置してもらいます。
勿論戦争に使われても困るので、軍の施設の中でもかまいません。
出入りする人には国境並みの検査を受けてもらいましょう。
それでも流通が大きく発展すると思うんですよ」
「確かに。ニーベル国で生の海の魚が食べられるようになったりするかもしれませんね」
「でしょ? 通行料金は安く出来ないでしょうが、便利になると思うんです」
昔、城同士が繋がってると聞いた時に、思いついた事なんだよね。
折角の技術なのに、限られた使用じゃあもったいない。
禁忌魔法でもないんだから、使っても良いと思うんだ。
「これは各国ともメリットはあると思うんですよ。
特に王同士が集まり戦争を回避しようとしている現在、無理な事じゃないでしょ?」
「それはそうですね」
「商人なんかの移動も活発になって経済も発展すると思いますよ?」
「……判りました。王様に話してみましょう」
「これの成功をもって、俺への褒美としてください」
「あまり福田さんにメリットがあるとは思えないですけど?」
「ありますよ! 俺が早く移動しても誰も不思議に思わなくなります!」
これ、重要。
俺が『コネクト』を使ってセキハイムからロッツギルに移動した場合、伝書鳩よりも早い。
いくら早い船を持っていても、こういう機関が無いとおかしいじゃないか。
いずれ『コネクト』が使える事がバレてしまう。
でも誰もが使えるなら、誰も不思議に思わないだろ?
「俺にはメリットだらけですよ。お願いします」
「判りました」
これでやっとニーベル国の褒美も決まった。
もしかしてコルラド国でも何か言われるのだろうか?
面倒だなぁ。適当に考えてくれれば良いのにな。




