ジジイとシロー
「ここは……どこじゃね?」
「は~い、質問禁止ですよ~」
「そうじゃったな。だが、少しは答えてくれても良くないかね?」
「そうですね。まぁ簡単に言えばダンジョンですよ」
「ダンジョンか。で、どこに行くつもりなのかね?」
しまった。
4つ穴が開いてるが、どれに行けばどこに行くかが判らない。
もう! 穴の横に表札でも付けておけよ!
何て考えてたら、左の穴からジローがやってきた。
「人間の気配がすると思ったらお前か」
「やあジロー。タローの所に繋がってるのはどれ?」
「タローの所へはその穴だ」
あぁ、右の穴ね。
ジローの来た穴の正面か。
「張り紙しても良いかな? 俺には判らないから」
「良いぞ。勝手にすれば良い」
「ついでにトムさんの所に行くのも教えておいてよ」
「トムの所へはそっちの穴だ」
「了解。ありがと」
それだけ言うと、ジローは帰っていった。
忘れない内に張り紙をしておく。
残った後ろの穴がサキの所に繋がってるんだな。
「福田君!」
「うわっ、びっくりした! 何ですか?」
「今のはミノタウロスじゃないか!」
「そうですよ? ミノタウロスのジローです」
「と言う事は、ここはミノタウロスのダンジョンの最奥……?」
「ええ」
「なんと……」
静かだったから気にしてないのかと思ってたけど、驚いてたのか。
いや、ジローに怯えて息を潜めてたのかもしれない。
今でも若干震えてるようだし。
「さ、行きますよ」
「ど、どこに行くつもりじゃ?」
「タローの所です」
「タ、タロー……。それはちなみに誰かな?」
「誰? だから、タローですよ?」
「そうじゃなくてな、え~、種族じゃよ」
「種族? あぁ、ドラゴンですね」
「ドラ?!」
いや、青色の機械で出来た猫じゃないですよ?
便利な物をくれるという点では合ってるけど。
「ワシはここで待ってるから、行ってきたら良いじゃろう! うん、それが良い!」
「へ? 待ってる? まぁ良いですけど、ケンタウロスやユニコーンが来るかも知れませんよ?」
「ケン?! ユニ?!」
う~ん、その2つにはボケが浮かばないわ。
ケンやユニで有名な人知らないし。
「付いて行くぞ! あぁ、付いて行く!」
「そうですか。じゃあ行きましょうか」
「ワシから離れないでくれよ! 1人にしないでくれよ!」
ジジイに言われても全然嬉しくないなぁ……。
こういうのは可愛い女性に言われたかったわ。
今考えると、ここまで驚いてない俺の仲間って凄いね。
慣れ? 俺が非常識だから? うるさいわ!
穴を進んでいくと、無事にタローの所へ到着した。
タローは俺を見て嫌な顔をしている。
ドラゴンの顔色なんか判らないんだが、間違いない。1歩下がったし。
「……福田さんですか。何の用でしょうか?」
「何で敬語?」
「あんな目にあって、同等、いや、上から話せる程のバカじゃないんで」
「……そこまでの事はしてないでしょ?」
「目を逸らしながら言っても説得力はありませんよ」
どうやらトラウマになってるようだ。
あの毒攻撃がよっぽどイヤだったんだね。
「ちょっと、お願いがあって来たんだよ」
「……イヤな予感しかしませんが。聞きたくないけど、聞きましょうか」
俺の真似をするなよ。
そうか、後ろで小さくなってるジジイの所に行った時の俺ってこんな感じなのか。
そう考えるとタローの気持ちも理解出来るなぁ。
まぁ、それはそれ。用件を伝えよう。




