サミットの褒美2
「まぁ、それは半分冗談としてじゃ」
「半分かよっ!」
「だって福田君との付き合いも短いから、望んでる物とか判らないんじゃもん」
「じゃもん、じゃないよ! 孫を差し出すのを止めなさいよ!」
「だってのぉ……。あの孫、結婚出来ると思うか?」
「……それは本人の努力じゃないでしょうか?」
「肯定はしないのね。まぁ、ワシもそう思うが。
で、福田君は何を望む?」
何を望むか。
そおう言われると特に無いな。
俺もロッツギルの事を詳しく知らないし。
あっ、そうだ。1つだけ思いついた。
「そうだ。ダンジョンに入る永久許可を下さいよ」
「そう言えばランクピンクの冒険者だったのぉ」
この国ではダンジョンに入るのにも許可が必要だった。
許可待ちで何日も無駄に過ごしたくない。
いつでもすぐに入れるようにしてもらえればありがたい。
「ただ、ダンジョンに入るのに許可が要るのは西側だけだぞ?」
「そうなんですか?」
「詳しく言えば、聖王国近くのダンジョン限定じゃな」
「何でです?」
「あの国の兵がダンジョンに隠れないようにじゃよ」
なるほど。
武装しててもダンジョン内なら不思議じゃないもんね。
そうやって隠れてれば、いざって時にゲリラ出来るもんな。
「それでも良いです。許可を下さい」
「本当に無欲じゃのぉ。了解した。
だが、それだけでは他国と釣り合いが取れん。他にも無いかの?」
他にもって。
今のも頑張って出したんだぞ。
他になぁ……。
「じゃあ、シンプルに。グランザムと争うのは止めてください」
「ホッ! また突拍子も無い事を出してきたのぉ!」
「いや、重要でしょう」
「向こうが攻めてきてもか?」
「同じ条件をグランザムにも出しますよ。
会合が行われるって事は、双方共受理したって事になるでしょ?
そもそも、戦争を無くす為の会合なんだから問題無いでしょ?」
「ふむ。……確かにそうじゃな。こりゃ福田君に一本取られたな」
「散々やられてますからね。やっと1つ返したって所でしょうか?」
「ホッホッホ。では福田君が生きている限り、その内容は決定としよう。
ただし、破って攻めてきた場合は反撃するぞ?」
「ええ。その代わり、双方共、内政干渉や裏工作も禁止にしますよ。
ちゃんと話し合いで解決してください」
「判っておる。大体、こちらから仕掛けた事なぞ無いわい」
「そうですか? あの姫様見てると、やってそうに思えるんですけど」
「……あれは特殊じゃ」
特殊なのか。
爺さんにまで特殊って言われてるぞ、姫様。
結婚の心配もされてるし、どれだけお転婆なんだよ。
「じゃあ、そういう事で決定じゃな」
「もう、判りましたよ。俺の島でサミットね。はいはい、了解しましたよ」
「サミット?」
「あぁ、各国の王様の集まりの事をサミットって言うんですよ」
「なんでじゃ? 今までそんな言われ方をされてなかったと思うのじゃが」
しまった。
前世の感覚で喋ってしまった。
こっちの世界にはサミットって言葉は無かったのか。
考えれば、普通に使ってたけどサミットって何? 何かの略?
そもそも英語? フランス語? ドイツ語?
「ええと、『さあ、皆で集まって、とっとと決めましょう』の略です」
「それでサミットか。うむ、これからそう呼ぶとしよう」
いい加減に言った事が採用されてしまった……。




