お見通し
俺は逃げるようにロッツギルを後にした。
が、このままでは面白くない。
なので出航後に『コネクト』を使ってロッツギルの王様、そう、ジジイの所に行く。
着いた場所は客室のような所だった。
何故ここなのだろう? 王の私室に板を置くと言ってたと思うが。
「お待ちしておりました」
「うおっ!」
まさか、背後に人が居たとは!
姿から多分城の執事さんだと思うが。
しかも来るのが判っていたような口ぶりだ。
「来るのを知ってましたか?」
「はい。王様から昨日今日の内に、福田様が訪れると言われまして待っておりました」
「そ、そうですか」
「王様の所にご案内致します。こちらへどうぞ」
俺の到着は提督から連絡があったから判ってるんだろう。
でも、何で来る事が判ったのだろうか?
執事さんに案内されて謁見の間に連れてこられた。
そこには王様だけが座っていて、他には誰も居なかった。
「やあ、福田君。久しぶりだね」
「……久しぶりです。何で来る事が判ったんですか?」
「簡単な事じゃよ。ほれ、アイがそっちに向かったであろう?
ならば文句を言いに来ると思ってたのじゃ。当たりじゃろ?」
くっ! 全くその通りだ。
「って、判ってるなら止めてくださいよ!」
「言って止まるくらいなら苦労せんわい。
無駄足を踏んだ方が身に沁みて判るじゃろ。して、何の用じゃ?」
「……想像通りですよ」
「ほっほっほ、やはりの。
所で、聖王国の件じゃが、上手く行ったようじゃの」
「ええ。助かりました」
「それはこっちのセリフじゃ。助かったのはこちら。
それに国内の裏組織壊滅にも協力してくれたそうじゃないか」
あぁ、そんな事もあったね。
バカな冒険者に絡まれた件だろ?
勝手に自滅したんだが。まぁ俺の運のせいだけど。
「偶然ですよ」
「ほっほ、偶然ね。まぁそういう事にしておこうかの」
「偶然ですよ。向こうが絡んで来たんですから」
「はいはい。そうじゃな。向こうが自滅したんじゃな。判っておるよ」
くそー、バカにしやがって。
何でもお見通しかよ、このジジイは。
「さて、ここに呼んだのには理由があるのじゃ」
「えっ? 謁見の間に?」
「そう。さっきまで会議をしておっての。決定した事をすぐにでも福田君に伝えようと」
「はあ。何も関係無さそうですけど」
「いやいや、凄く関係あるぞ?」
うん、凄くイヤな予感がする。
悪巧みに引っかかったような感じだ。
「聞きたくないけど、聞きましょうか。何です?」
「うむ。この度王族会議が決定してな。各国の王が集まり、未来の事を話し合おうという事になったのだよ」
「はぁ。良い事ですね」
前世で言うサミットか。
聖王国やサイラス国が参加するかは判らないが、良い事じゃないか?
「当然、聖王国とサイラス国は不参加じゃよ」
「あ、やっぱり」
「そうなると新たな危険があるのは判るじゃろ?」
危険? あぁそうだね。
日本でサミットが開催される時もそうだった。
「王様が集まるので、そこでテロ、ええとそこを攻撃されたら大変って事ですよね?」
「その通りじゃ。話が早くて助かるわい。
そこで福田君じゃよ」
「そこで俺?」
「ほれ、島じゃ、島」
あぁ、島を会場にするのね。
確かに防衛に関しては完璧だわ。
って、俺の島でサミットする気かよっ!




