ウソと言い訳
最初に集合した場所に全員が集まる。
ここで合否を発表するらしい。
クズハさんが最初に壇上に登り発表していた。
一言直す点を言った後に合格と言っている。
俺の所も全員合格にするつもりなんだが、一言が思い浮かばない。
なにせ全部ヒヨ任せだったからなぁ。
ここでもヒヨ任せにして、また「にゃ」とか言ったら恥ずか死するわ。
って事で、俺は「やった事を忘れないように! 合格!」とだけ言って逃げた。
これでやっと解放されたぜ!
そもそも、このダンジョンに来たのはアポロン神の作ったダンジョンを見に来たんだけどな。
1階にある像を見ただけになった。
ではまた行くのかと聞かれれば、答えはNOだ。
もう面倒。
見たという事にしておこう。
港へ行こうと歩いていたら、魚屋のおっちゃんと出合った。
馬車を出そうと思ったが、人目が無い所が無かったんで諦めたんだよね。
行き先を話すと馬車に乗せてくれるという。
おっちゃんは冒険者の護衛が付いたぜ!と喜んでた。
聞けば危険ではないが安全でもないと言う。
要は獣の危険は無いけど、聖王国のゲリラが居る事がまれにあるとか。
何も起きる事無く港へ到着。
おっちゃんの言ってた通り、何かが起きる方はまれなんだが。
おっちゃんと別れて自分達の船に行く。
よく考えたら、船をここに置きっぱなしにしてたので、馬車が出せないじゃないか。
って船を置きっぱなしって変な言い方だな。それが普通なのに。
勝手に出航しちゃダメだろうな。
一声しておこうと詰め所のような所に行くと、何故かキムラ総督の部屋に通された。
「これは福田様。今日はどのような用件で?」
「いえ、ダンジョンも見ましたし、帰ろうかと思いまして。
出航の許可を貰いに来たんですよ」
「ええっ?! 帰られるのですか?!」
「え、ええ。何か……?」
「いえ……何でもありません」
「そうですか? それで出航の許可は?」
「え~、自由に出航して頂いて結構です。
え~、しかしですね、ちょっと今日は止められた方が良いと思いますが」
「ん? 何故でしょうか?」
「え~、そうです! 天候が変わり波が高くなると予想されています!
危険でしょうから、明日にされては?」
「あ、それくらいの事なら大丈夫ですよ。伊達に改造してませんから」
「そ、そうですか? でもな~、危ないと思うな~」
「ご心配無く。頑丈な船ですので」
「あっ! そうだった!
今、近くを聖王国の軍船がウロウロしているとの情報がありました!
襲われる危険がありますので、居なくなるまで待たれてはどうしょうか?」
「それも問題無いですよ。え~と、速度が出る船なので沖に逃げますから」
「いや~、危険だと思いますけどね~」
なんだろう? 許可はくれたが、出させたくない感じが凄くする。
何かあるんだろうか?
「あの~、出航させたくないようですけど、理由があるんですか?」
「ぎくっ! 何故それを!」
「いや、丸判りですけど……。で、何か?」
「バレたのなら仕方ありません。正直にお話しします。
実は姫様がこちらに向かわれているのです。明日到着予定です」
「なるほど、判りました」
「では!」
「ええ。すぐに出航します!」
「何故?!」
「戦闘狂に会いたく無いからです!
近衛団長と親しいなら聞いてるでしょう? 最初に会った時に何があったか」
「……戦われたと聞いております。そして勝たれたそうですね」
「そうです。その後の事も知っておられるでしょう? 逃げない方がおかしいですよ」
「……まあそうですね。判りました。
ただ、これだけは覚えておいてください」
「なんでしょうか?」
「私は貴方を止めました。頑張って止めました。でも貴方は出航した。
これだけは覚えておいてくださいね!」
「は、はい……」
そんなに言い訳が必要なのだろうか?
まぁ止めたのは事実だからいいんだけど。
バラしたのも提督だけどね。




