皆の裏切り
その他の質問も出ていたが、もう俺には聞いている余裕は無かった。
多分、俺のメンバーの中で試験官が出来そうなのは、カンキジコンビくらいだろう。
俺やナグラさんは異世界人なのでムリだし。
コタニさんは怪しい。なにせ路銀が尽きたからとカジノの町でギャンブルしてた人だもん。
皆を集めてコソコソと話し合う。
「キジマさん、あの試験を俺が評価出来ると思う?」
「どういう事……あぁ、なるほど。確かに未経験ですよね」
さすがキジマさん。一言だけで納得してもらえた。
皆は頭に?を浮かべている。
「要は、やった事の無い行動の評価が出来るかって事ですね?」
「そう! そうなんだよ。皆もそうだろ?」
「私はした事あるし」
「えっ?!」
「召還されてからはダンジョンを回ってたのよ? その時に野営した事が何度もあるわ」
そうだった!
ナグラさんはそれを目的に召還されてたわ。
短期間でアチコチに行ってたから、宿に泊まる事の方が少なかっただろう。
くっ、まさか身内に裏切られるとは!
「私もあるっスよ?」
「えっ?!」
「お金が無い時は野営は必須っス!」
それは野宿と言わないだろうか?
でも考えてみれば、カジノの町では1人だったな。
誰かとパーティーを組んだ経験もあるのかもしれない。
「……カンダさんとキジマさんは問題無いよね?」
「ええ。当然です」
「……って事は、俺だけが未経験ですか?」
「そうなりますね」
「冷静に言わないで下さい。ヘコみます」
キジマさん、冷たい!
心の汗が目から出てきそうだよ。
「どうしよう……」
「質問ですが、知識はあるのですか?」
「多分……」
「では大丈夫ですよ。堂々としていれば良いんです」
「大丈夫かなぁ?」
「それで試験を受けている人のを見て、ついでに勉強すれば良いんですよ」
「教えてるフリしながら、見て覚えるのね」
「そうです。後はヒヨを召還してください」
「ヒヨを? 何故?」
「ヒヨは知っていますから」
「何で知ってるの?!」
「教えましたから。それにレイからも色々聞いて勉強してたようですし」
レイは待ち伏せのエキスパートだもんな。
レイから聞いてるなら詳しいだろう。
それにしても、ヒヨは色んな事を習ってるなぁ。
立派な軍師になりそうだ。
そういう風に育てようと俺が決めたのだが、知らない間に育ってるのが怖いな。
それよりも1つ懸念材料が。
「クロネコを連れた試験官って変じゃない?」
「皆の前で召還すれば大丈夫でしょう。
従魔を連れているだけで優位に立てますよ。
それでも不安ならケロも一緒に召還してください」
「モフモフが増えるだけだと思うんだけど?」
「一応ケルベロスですよ? いつもの小さい体型ではなく、大きくなってもらえば良いのです」
なるほど。象より大きい従魔を従えてる冒険者って思わせるのか。
それを見れば、ヒヨも巨大化すると考えるよな。しないけど。
「悩んだら、ヒヨに相談してください。
念話を使えば、他の人には聞こえませんから。まぁ疑われる事は無いと思いますが」
「判った。そうしてみるよ。ありがとう」
なんとかなりそうだな。
このままだったら、俺も青色冒険者に混じって勉強しなきゃならない所だったぜ。
1日ほどだし、なんとか誤魔化しながらやっていこう。




