クイールへ
途中で変な乱入者もあったが、ようやくロッツギルに到着した。
アポロン神が作った『芸術のダンジョン』は、紛争の多いクイール近くにあるらしい。
通り過ぎてるよ……。
Uターンして、クイールに到着したのは昼前だった。
クイールは、港に軍船のような物が多数停泊している。
海沿いにも防壁が作られているし、その先には砦のような物も見える。
やはり常に聖王国から狙われてるので、厳重になっているようだ。
入港しようとしたら、当然軍船に止められた。
この世界の軍船でこの船が止められる訳が無いが、おとなしく指示に従う。
「そこの船、所属と目的を告げろ!」
軍船から拡張された声が聞こえてきた。
所属か……。いきなりの難問だなぁ。
よく考えれば、船を買ったのはセキハイムだし住んでる所はニーベル国。
しかもどちらでも船を所属させてない。
というか、所属なんて物があるなんて初めて知った!
まぁ、所有者が住んでいる所で良いだろう。
後は目的か。
こちらは簡単。ダンジョンだ。
冒険者なので、ダンジョンに入りに来たってのは問題無いだろ。
拡声器が無い(あるかもしれないが、調べるのが面倒)ので、大声で答えを告げる。
「こちらはニーベル国の福田という者だ! 冒険者なのでダンジョンに用事があって来た!」
「ウソをつくな!」
あれっ? 正直に言ったのに、ウソつきよばわりされたぞ?
「事実なのだが!」
「ニーベル国には海が無いではないか! それに船で直接ダンジョン目当てに来る冒険者なんて聞いた事も無い!」
うん、正論ですね。
返す言葉もありません。
が、それでは困る。ここは交渉の得意なキジマさんにお願いしよう。
キジマさんは、話す内容を決めるようだ。
会話はカンダさんがするらしい。
女だからなめられるのを警戒してるのかと思ったら、大声を出したくないだけなんだってさ。
「ウソをつくなら、海の無い国を選ぶ訳が無いだろう!」
「確かにそうだが、それでは登録を調べる事が出来ない!」
「どうすれば調べられるのだ!」
「少なくとも船を作った、もしくは買った国があるだろう! そこはどこだ!」
「セキハイムの王都だ!」
「だから、ウソをつくな!」
セキハイムの王都だとウソになるの?
あっ、遠いからか!
セキハイムからだと、セキハイム→大森林→コルラド→聖王国→ロッツギル、って距離だもん。
地球で言えば、日本からインドに行くようなものか。
それを5人乗りくらいの船で移動。うん、嘘くさい。
「それも同じだ! ウソをつくならコルラドとか言うだろう!」
「ううむ……では調べるから少し待て! 所有者は先ほどの福田で良いのだな!」
「その通りだ!」
どうやら少しは納得してもらえたようだ。
購入者で登録がしてあるのかね。
5分ほどすると、また声が聞こえてきた。
「問い合わせたが、確かに福田という者が船を買っている事は判明した!
しかし、聞いた船を造りが違うではないか!」
ここでルシファーさんの魔改造の問題が!
だが、キジマさんは冷静だった。
「購入した船そのままで、長い航海が可能ではないのは判るだろう!
耐えられるように改造したのだ!」
「その理由は判るが、それでは入港を許可出来ない!」
まぁそりゃそうだよなぁ。
聖王国から狙われている以上は、不審者は入れられないだろ。
内部でゲリラでも起こされたら大変だもんな。
しかし、どうしたものか……。
「ここに居る、福田様の身分はロッツギルの王様が保証するはずだ!
問い合わせてもらいたい!」
「何?! それがウソだった場合、どうなるか判ってるのか?!」
「何の問題も無い! 問い合わせてくれ!」
「わ、判った! 少し待ってくれ!」
わーお、切り札をさっさと使いますか。
確かにそれなら入港可能だろうけどさ。使いたくなかったんだよね。
だって、姫様に情報が行きそうじゃん?




