トローリング
そのまま島へ移動し、そこから船で出発。
地図を見ると、セキハイムの王都より遠い。
まぁあの時が1日半で到着したんだ。
今回は2日もあれば着くだろう。
沿岸寄りを走ると迷惑をかけるし目撃されるので、少し沖合いを走る事に。
その為に1日多めにみて、3日間の船旅の予定にした。
折角沖を航行してるので、釣りをする事に。
今回は本気で大物を狙う!
フフフ、ネット通販でカジキも釣れる竿を購入してやったぜ!
某俳優さんみたいなの、あこがれてたんだよね。
まずはエサ用に普通の竿で釣る。
これが爆釣! アジみたいな魚が50匹以上釣れた。
10匹だけ残して、後は魔法で冷凍保存。
う~ん、魔法って便利だ。
さぁ、準備は整った!
いざ、トローリング!
って、意気込んだが、全く釣れない。
1時間経過したが、気配すらない。
引き上げてみれば、エサにも以上無し。
おかしい、テレビで見た時はすぐにかかってたのに!
って、それはテレビだからか! 編集してあるからすぐにヒットするんだな!
しかし釣れない。
異世界と地球では違うのだろうか?
それとも釣り方が違う?
ただ単に、俺がヘタなだけ?
そういえば、前回もカンダさんが大物を釣っていたな……。
「ちょっとカンダさん、やってみてよ」
「えっ? 俺がですか?」
「前もカンダさんが大物釣ったじゃん。コツでもあるのかと思ってさ」
「いや、何も考えずに竿を動かしていただけですけどね」
「まぁまぁ、釣れなくてもかまわないから、やってみてよ」
「そうですか? じゃあ。ちょっと面白そうだと思ってましたんで」
カンダさんはエサを取り替えて、海に落とす。
投げるんじゃなくて落とすの?
その後は、リールを自由にして糸を出しっぱなしにする。
糸がほとんど無くなった頃にリールを戻し、今度は竿を引っ張ったりしてる。
動かす事で変化を与えてるのか?
繰り返す事20分。
やはりカンダさんでもダメなのかと思ってた時、突然カンダさんが大きく引っ張られた。
竿を見れば凄くしなっている! HITなのか?!
慌ててカンダさんと船をロープで繋ぐ。落ちたら大変だからね。
カンダさんはリールを巻こうとするが、ピクリとも動かない。
どちらかと言えば、少ない糸が徐々に出ていっている。
これ、釣れるのか?
前回は船の機能によって釣り上げられたが、あれは近くに魚が居たからだと思う。
これだけ離れてたらどうすれば良いんだろう?
テレビでは格闘の末に釣り上げてたけど、本当なのか? 疑わしくなってきた。
操舵室へ行き、またマニュアルを見る。
前回と同じ釣りのページを読む。
1時間もボーっとしてたんだから、読んでおけば良かった!
同じページを見ているが、やはりボタンを押すくらいしか書いてない。
困った。諦めてボタンを押してみるか?
バカみたいな船だ。当ててくれるかもしれないし。
ボタンの射程でも書いてないかと思いじっくり読んでると、※の印があった。
『※詳しくは操舵を参照』
操舵? 何の関係が?
藁にも縋る思いで操舵のページを見る。
そこには魚群探知機のモードの事が書いてあった。
その中に自動で魚を追うという項目が!
これか!
何々? 魚群探知機のモードにしてから、操舵輪の中央を押す。
そのまま操舵輪を右に2回転回すと自動追尾モードに切り替わるらしい。
早速操作すると、船内にサイレンが鳴り出した。
「モード変換、自動追尾モード! 船が暴れますので、海に落ちないように気をつけてください!」
ルシファーさんの声じゃないか!
何やってんだよ!
放送通り、船は勝手に方向転換して、カンダさんが格闘している魚を追い出した。
そして近くまで行ったら勝手にビームを撃って、息の根を止めた。
カンダさんはリールを巻くだけの、簡単な仕事をするだけだった。




