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プレオープン前

本当に1週間でダンジョンを作ってしまった仏様には驚いた。

ただ、出来たと連絡を貰った時には元気が無かったので、突貫工事をしたんだと思う。

もしかしたらサガワさんとの会話を聞いていたのかもしれない。

適当に1週間なんて言ってすみません。


施設も1週間でほぼ完成した。

そこに仏様から渡されたモニターを設置する。

う~ん、どう見ても日本の有名なメーカーの名前が書いてあるモニターなんだが……。

サガワさんにもツッコまれたので、ダンジョン名ですよと適当に答えておいた。

そしたら、ダンジョンの名前が正式に『シャープダンジョン』となってしまった。

まぁ、これなら誤魔化しが効くだろう。多分。


それから3日後。

全ての施設が完成した。

プレオープンは明日。

では今日は何をするのかと言うと、実験である。

簡単に言えば、青色冒険者に1階を踏破してもらい、タイムを計測するというもの。

それには危険もあるので、俺が付き添う事になっている。


ちなみに俺のパーティーは別行動で、4階まで進んでもらう事になっている。

何故かと言うと、俺が居たら運を使って踏破する為に、正確なタイムが出ないからだ。

俺のパーティーにはタブレットを渡してあるので、困ったら簡単に帰れるはずだ。

迷ったりするまでは使わないように言ってあるけど。


連れてこられた青色冒険者は4人組。

見た感じ、戦士・戦士・魔法使い・弓使い、といった所。

全員が男で、17~20歳。

20歳の戦士がリーダーのようだ。

聞けば冒険者になって、まだ1ヶ月らしい。

近くの村から応募を見て来たそうな。


最初、俺が付いていくと言ったら怪訝そうな顔をしていたが、ピンク色の冒険者のリーダーだと言ったら尊敬の目に変わった。

ごめんなさい、尊敬される程の事はしてないです。

運のみでピンクになりました。


付き添いではあるが手出しはしないと伝え、ダンジョンに潜る。

今回はモニターも稼動してるので、中での様子も見る事が出来る。

そちらのチェックも兼ねているので、色々動き回って欲しい。


彼らの行動を見てるが、俺でも判るくらいにぎこちない。

戦士が、弓使いや魔法使いの射線の邪魔をしてるし。

その戦士はモンスターを見つけるとすぐに戦いに行く。

毒持ちとか近くに罠があったらどうするんだ?

一応タイムを計ってるので急いでるのかもしれないが、危険性は考慮した方が良いと思うんだが。


はっきり言って、連携が出来てないのが丸判り。

アドバイスしたいが、モニターされてるのでそれも出来ない。

う~ん、意外に見ててイライラするわ。


30分くらいの時間をかけてボス部屋を発見。

倒して入り口に戻ったら、ゴールタイムは72分だった。

これははっきり言って遅いと思う。

急いでいるなら戦闘は避けるべきだし、ドロップ品は無視するべきだ。

出合ったモンスターは全部倒してたし、ドロップ品である現金も拾ってた。

仏様に出した要望通りに見事に引っかかってる。


実験としては満足行く結果だけど、さすがにアドバイスさせてもらった。

戦闘の方法や、依頼に対しての行動等を話した。

今回の場合、速度が大事。

『タイムを計るから急いでボスを倒し帰って来る事』という依頼な訳だ。

それに対して出会うモンスターを全て倒して、なおかつドロップ品を拾ってるってのは論外。


当然ながら反論された。

「雑魚のモンスターから逃げるなんてかっこ悪い」「ドロップ品は自分達の物になるのだから回収するに決まってる」

そりゃそうだ。言ってる事は判る。

でも依頼を完遂する事が一番大事だ。

それを疎かにしたら、冒険者に一番大事な「信頼」が無くなってしまう。

プライドよりも「信頼」の方が大事だと教える。

特に今回は行動が全てモニタリングされている。付き添いで俺も見ているし。

プライドが大事なら、依頼を受けずに勝手にダンジョンに行けば良いだけだ。


こういう正論を突きつけたら、ショボンとなってしまった。

偉そうに言ってごめんよ。俺も出来てる訳じゃ無いけどさ、ちゃんと育って欲しいんだよ。

そんな話をしてたら俺のパーティーが戻ってきた。

ゴールタイムは85分。4階まで行ってのタイム。

ピンク色の冒険者が速度を重視してクリアしたのを目の当たりにして、さらに凹んでしまった。

これを糧に頑張ってもらいたい。


モニターは問題無かったようだ。

今回のスイッチャーはギルドマスターがやっていた。

徐々に教育するらしいので、最初の内はギルドマスターがやるそうな。


これで、開催準備が整った。

後は明日のプレオープンだね。

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