製本
全ての馬が怪我をする事も無く、無事にゴールした。
これで一応は依頼達成という感じだろうか。
また城へ戻り、そこから冒険者ギルドに行く。
そのままギルドマスターの部屋にドナドナ。
「依頼達成です。ご苦労様でした。報酬は1000万です」
「じゃあそれを俺が出した依頼に当ててください。そういえば1円も払ってなかったですから」
「そうですね。ギルドが立て替えてました」
「良かったんですか?」
「普通はダメですが、達成すると判っている依頼を受けてらっしゃったので。
それを担保にして立て替えてました。問題ありません」
俺が逃げても、この依頼料で補填するって事ね。
依頼料の方が高いから、損するどころか儲かる。考えてるなぁ。
「報酬を当てるのは良いですが、半分くらい余りますが」
「その余ったお金で、完成した書類を本にしてください」
「本に?」
「ええ。その中から5冊をください。後は1冊1000円くらいで売り出してください」
「売るのですか?」
「そうです。ギルドの手数料が必要なら1100円とかでもOKですよ。
ただ、あまり高いと誰も買わなくなるので、1500円までにしてくださいね。
あぁ、売る値段を800円にしましょうか。で、ギルドは200円で合計1000円。どうでしょう?」
「それでかまいませんが……。売れるのですか?」
「さぁ? 個人的には欲しい物なので、売れると思いますけど」
少なくとも旅人や旅行者には売れるんじゃないかな?
行った先で美味しい物を食べたいのは、誰も考えると思うんだ。
それが判る本があれば買うだろ。1000円なら損は無いはず。
まぁ、売れなくても良いんだ。あくまで趣味の一環だし。
「まぁ、ギルドとしては売れなくても困りませんが」
「残金で製本出来ますかね?」
「大丈夫でしょう。それでも余ると思いますけど」
「それでも余ったら、そうですね……あっ、働いてる『赤い狼』に渡して下さい。
よく働いてくれたので、臨時報酬って事で」
「良いのですか?」
「ええ。ちなみに内訳はどんな感じです?」
「依頼に使うお金が500万くらいでしょうか。
製本するのに200万くらいかかるでしょうから、300万くらい余るのではないでしょうか?」
「それは何部作ります?」
「200部くらいだと思います」
「じゃあ倍にして、ついでにカラーでお願いします」
「それでも100万は残ると思いますよ?」
「ではそれを臨時報酬で渡してください。あっ、ギルドの手数料も必要でしたね」
「そうですね。では1000万の1割で100万ほど頂きましょうか」
「臨時報酬が無くなるな……」
あれだけ頑張ってくれてるんだ。
サマナーの方法も教えてもらったし、臨時報酬は渡したいな。
じゃ、手出しするか。
「判りました。じゃあ100万はこちらから出しますよ」
「本当に良いんですか? 損ばかりじゃないですか?」
もし全部が売れたとして800円×400部=32万か。
確かに大損だね。
確か発行部数を倍に増やしても金額は倍にならないはず。
増やしたほうが安上がりだって、昔薄い本を作ってた友人が言ってた気がする。
あくまで日本の話なので、ここも同じかは知らないけど。
だから、もう少し発行部数を増やすか?
いやいや、800部にしても64万じゃないか。結局損だ。
全部売れるとも限らないしな。
良いんだよ。完成が楽しみだし。
『赤い狼』とも知り合えたし。
何よりも大した事してないのに貰ったお金だから、損のようで損じゃ無いから。
「問題無いです」
「……そうですか。判りました。本の内容の編集はどうしますか?」
あぁ、その問題があるか。
出来れば日本の本のように写真入りとかが嬉しいが、そこまでは無理だろう。
それにあんな風に纏めるのは無理だ。
見た事はあっても、それに似せてでも作るのはセンスが要るだろ。
やった事無いので、そういうのはプロに任せよう。
「編集とかは慣れてる人にお願いしてください。
あっ、絵も欲しいので、絵描きさんもお願いしたいですね」
「絵まで入れますか……。すみませんがもう100万追加してもらえますか?」
「了解で~す」
200万を手出しして、そのままギルドマスターに渡しておいた。
後は本の完成を待つだけだね。




