冒険者ギルドの2階
依頼をギルドに出した翌日。
ギルドは大騒ぎになったらしい。
そして、街中を走り回る冒険者が多数目撃されたとか。
俺の所には何の連絡も無いから、ギルドマスターが頑張ったんだと思う。
1週間経ったので、そろそろ落ち着いてきただろうとギルドに行ってみる事にした。
1週間の間、俺は釣りをしてたよ。
カンキジコンビは夫婦で買い物に行ったりと新婚を満喫。陥没した地面に落ちないかな。
ナグラさんとコタニさんは、ヒマだからと赤木亭でバイト。
ただ、毎日誰か1人が必ず俺の護衛に付いてる。
今日はナグラさんの日だ。
ギルドに到着すると、すぐにあのおっさんが手もみしながらやってきた。
お得意様だもんな。金払い良いし。
ただ、相手をしてた冒険者を放っておいて来るのはどうかと思う。
「これはこれは福田様。本日はどのようなご用件で?」
「俺の用事は後で良いから、あの冒険者の相手をしたらどうですか?」
「あいつですか? 良いんですよ、放っておいて」
「何でです?」
「依頼を失敗したのに、言い訳ばかりしてるんですよ。で、何割かでも良いから報酬をくれってゴネてるんです。
相手をするだけ無駄ですよ。で、ご用件は?」
「あ~、別に用事は無いんですけどね。
進捗が気になったので、様子を伺いに来たんです。あっ、これ差し入れです」
俺は赤木亭で作られたスルメを渡した。
これ、ナグラさんが知識チートして作られたらしい。
自慢してきたけど、そこそこの売れ行きらしいので微妙ですよ?
「あっ、スルメですね。ありがたく皆で頂きます。
依頼の進行状況ですか。それでしたら2階の会議室へどうぞ」
「会議室ですか?」
「今は会議室を専用の部屋にして対処してますので。そこにキフミという者が居るので、話を聞いてください」
「キフミさん?」
「この依頼の責任者になった冒険者です。ランクは赤ですよ」
「へ~。じゃあ行ってみます。あっ、さっきの冒険者がこっちを睨んでるから早く戻ってあげてください」
「ご苦労様です! はぁ、面倒だなぁ……」
面倒でもアナタの仕事ですから!
頑張って働いてください。
ナグラさんと2階に上がると、廊下は結構混雑していた。
1階が空いていたのは、皆が報告しに2階に来てるからか。
人を掻き分けて進もうとすると、冒険者達から文句が飛んできた。
「おい! 割り込むんじゃねぇよ!」
「邪魔だ!」
「並んでるだろうが!」
「テメェ、見ない顔だけど新人か?! なめんじゃねぇぞ!!」
今にも殴りかかってきそうだ。
ナグラさんも武器に手を掛けている。
一触即発の事態の中、一際大きい声で喧騒が遮られた。
「その人は依頼主だよ! この依頼が無くなっても良いのかい!!」
「「「「えっ? マジで?!」」」」
「そうだよ! 依頼主の福田さんさ! 邪魔してるのはお前達の方だよ!!」
「「「「ス、スミマセンでしたーーーー!!」」」」
「お前達の報告は反省の意味も込めて、今日は受けないからね! 帰った帰った!!」
それを聞いて、全員が肩を落として帰っていく。
別に問題無いんだけどさぁ。
誰も居なくなったので会議室に向かうと、そこは既に会議室ではなかった。
何と改造されてカウンターが出来ているのだ!
中では働いている人が5人も居るし。
ギルドの中にギルドが出来てるって感じ。
部屋を間違えた?
「すみませんでした、福田さん。私はキフミと言います」
「さっきの大声の人!」
「そうです。けどその言われ方は……」
「ああ、すみません」
この人がキフミさんか。
年は20代後半かな?
失礼だけど顔は普通。まぁ、美人や美女ばかり居る方が変なんだけどさ。
つくづく、ラノベの世界ってありえないって実感するなぁ。
ただ、やはり赤色の冒険者だけあって、隙が無い感じがする。
それに何でだろ? 俺と似たような匂いがするんだよな。




