依頼を出す
翌日。
大した仕事もしてないのに増えたお金を還元したいと思う。
昨日は買い物するかと考えてたが、良く考えれば店を知らない。
知らない中でウロウロするのも面白いだろうが、それでもハズレを引くとガッカリする。
そこで考えたのだ。
店のマップを作ってもらおう、と!
服屋なんかは好みもあるので必要無いが、食べ物屋は重要。
この世界にはネットなんか無いから、基本口コミだ。
ならば美味しいと言う人が多い店が当たりって事になるはずだ。
最初はダンジョンの情報を入手しようかと考えてたんだよね。
でも、タブレットを見れば判るんだもん。
その話を持って、ギルドに行く。
受付にはこないだのオッサンが居た。
「すみません」
「あぁ? あっ! 貴方はこの間の!! ギルドマスターに用事でしょうか?!」
「いえいえ、依頼を出しに来たんですよ」
「あれ? 貴方は冒険者ですよね?」
「そうですけど? 何か?」
「いえ、冒険者が依頼を出すなんて珍しいので」
「珍しいですか?」
「ええ。依頼を出すよりも自分達でやった方が得ですから」
そりゃそうだ。
例えば薬草が欲しいと考えたとする。
一般人ならギルドに依頼を出すだろう。
だが、冒険者なら自分で捕りに行けば良いのだ。
「自分でやるのが難しい依頼ですので」
「赤色、おっと今はピンクでしたね。ピンクの冒険者が難しい依頼ですか……」
「ランクの問題ではないんですよ。俺は他国の人間ですから」
「そういえばそうでしたね。ではどのような依頼でしょう?」
「依頼は3種類あります」
「3種類もですか?!」
「ええ。1つ目は『王都の食べ物屋の情報を集めて欲しい』です。
こちらは1件につき1万円払います」
「1件1万円! 凄く高額だと思いますけど?」
「かまいません。ただし、同じ店の情報は先に報告をした人にだけ権利があります。早い者勝ちですね。
でも例外もあります。最初の情報よりも有力な情報だった場合は、5000円払います」
「しかし、それでは詐欺があるんじゃないですか?」
「詐欺? 例えば?」
「例えばですね、ある冒険者パーティーが居るとします。
その中のBがZという店の情報を得ました。
Bはわざと情報を少なく報告します。その後でBの仲間のCが全ての情報を出せばパーティーで15000円の儲けです」
「なるほど。まぁ、そこはギルドの方が詳しいでしょうから、協力してください」
「は、はぁ……」
「2つ目は『王都周辺で獲れる魚の情報を集めて欲しい』です。これも1匹につき1万円払います」
「それは漁業ギルドに行ったら調べる事が出来ると思いますが……」
「独自で集めたいので。まぁ、漁業ギルドで調べて報告する人も居るでしょうけど、OKにします」
「意味が判りませんけど……」
「その代わり、これはランクが青の人限定にしましょう。若手育成のサービスのようなものですよ」
魚の事は、ついでなんだよね。
ある意味、こちらが還元って感じだね。
「3つ目は『集まる情報を管理してまとめる』です」
「それはある程度の能力が必要ですね」
「でしょうね。なので、受けられる人は、ギルドで選んでください。指名依頼をしてもらってもかまいません」
「は、はぁ」
「だって、さっき言った様に、詐欺をする人の選別も出来る様な人じゃ無いと困りますよね?
なのでギルドが信頼出来て、なおかつ能力のある人が望ましいですね」
「まぁそうですけど……」
「この依頼は100万円出しましょう」
「100万?! 高すぎませんか?!」
「その代わり何人でやっても100万です。10人でやれば1人10万です。
それに全ての情報が集まってからの支払いになるので、途中は無収入です」
「しかし、全ての情報が揃うのは長いと思いますよ?」
「じゃあ、期限を決めましょう。半月でどうです?
多分、初日が一番忙しいとは思いますが」
「半月で100万は、さらに破格ですよ?!」
「問題無いです。
じゃ、それでお願いします」
「ちょっとちょっと! 細かい点は?!」
「丸投げします! ギルドマスターにでも言えば、やってくれますよ。
駄々をこねるようなら『還元だから』と伝えてください。理解してくれると思いますんで」
「いやいやいや、ちょっと待って、福田さ~ん!!」
良し、依頼も出した。
後は情報が集まるのを待つだけだ。
ギルドマスターよ、儲かる仕事だよ、頑張って!




