試験運用
俺も手伝う事1時間。そりは完成した。
足元は大幅に改造されて、少々では壊れないだろう。
完成報告をギルドにすると、すぐにギルドマスターがやってきた。
「これが完成形ですか」
「ええ。後は実際にコースで馬に曳かせてみて、改良するくらいじゃないですか?」
「そうですね。では城まで運んでください」
「ん? 今何と?」
「王様にお見せしなければならないので、城に運んでくださいと言ったのですが」
「……え~」
それなら改造する前に言って欲しかった。
そうすれば、城で改造したのに。
もう車輪じゃないんですよ?
どうやって運ぶんですか? 馬に曳かせる?
下が砂地じゃ無いので、着く頃には壊れてますよ?
そう思ってたら、カム大工が付いてくるようにと俺を呼んだ。
到着した場所は、木材の加工をする所のようだった。
「あんちゃん、このリアカーを曳きな!」
「え? 現場にリアカーならあるじゃないですか」
「だからこれが必要なんだろうが!」
う~ん、意味が判らない。
言われるままにリアカーを曳いてギルドに戻る。
カム大工とは加工所で別れたので、1人で戻った。
少しすると、カム大工が馬を連れてきた。
「えっと、馬では曳けませんよ? 着くまでに壊れると思いますけど」
「そんな事は作った俺が知ってるわ! だから、こうするんだよ!」
そう言って、そりの部分をリアカーに載せる。
あぁ、なるほど。台車のようにリアカーを使うのね。
だから2台必要だったのか。左右のそりの部分を載せる必要があるからね。
そのまま馬を繋ぎ、ゆっくりと城へ向かう。
ギルドマスターも一緒に。
到着すると、すぐに王様がやってきた。
誰も連絡してなかったと思うんだが。
「城から来るのが見えたから、急いで来たぞ! 完成したか!」
「はい。これです」
「おおっ! なるほど。こういう作りか。これなら簡単に作れそうだな」
城から見てたのか。
確かに冒険者ギルドから城までは1本道だから、変な物が通ればすぐに判るだろう。
「早速実践させてみたい。大丈夫か?」
「もうですか? 大丈夫だとは思いますけど。どうですかカムさん。カムさん?」
カム大工を見れば、立ったまま固まっている。
どうしたんだ? 風邪か?
突いても動かないので、軽くビンタをお見舞いすると再起動した。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、王様だーーーーーーーーーー!!」
「えっ?」
あっ、そうか。
どの国でも気軽に王様に会ってたけど、普通は雲の上の人だったわ。
そりゃこんな反応にもなるか。
いかんな、どうも一般常識と離れていってるぞ?
立て直さなきゃね。俺は一般人、俺は一般人……。
「こちらが馬車を改造した、大工のカムです」
「カカカカカカカカカカカカカカカカカ、カムと言いますです! 本日は! 日もよくて! 正に馬車日和で!」
「良い良い、普通にしたまえ。カムだったかな? これは試験運行しても良いかね?」
「ははははははははははははははははは、はいですます! どうぞ、ご自由に!!」
「うむ。では浜辺で使ってみる事にしよう。曳く馬は城に居るのを使う」
こうして、全員で浜辺に移動。
城からは王様+貴族が20人くらい付いてきたので、大所帯になってしまった。
もう、俺は必要無いんじゃないですかね?
帰って良いですか?って言ったら却下された。
実験は大成功で、上機嫌の王様と共に城へ戻った。
そのまま以前の部屋に通される。
「いや、なかなか面白かった。あれを何頭かで曳いてレースをするのだな?」
「そうです」
「うんうん。やはり実物を見ると違うな。想像しやすい。これで貴族も文句は無いだろう。
さて、福田君。さらに追加依頼だ」
「またですか?!」
「今度が最後だよ。コースやギャンブルの草案を作って欲しい」
「え~。そういうのはそちらで決めたら良いんじゃ無いですか?」
「福田君の方が詳しいではないか。我々はその草案を元にして最終的な物を作るのが仕事だよ」
「はぁ……判りました」
また仕事が増えた。
何か、完成するまで帰れないんじゃないかって気がしてきたぞ?




