馬車改造
翌日。
朝からギルドに向かった。
今日は馬車(?)の試作品を作る話し合いがあるからだ。
受付のおっさんに声をかけると、裏手に回るように指示された。
裏手に行くと、そこには馬車が1台とギルドマスターと知らないおっさんが1人。
「おはようございます、福田様」
「あ、ああ、おはようございます。あの~、その様付けで呼ぶのは止めてもらえないですかね?」
「では、福田さん。これで良いですか?」
「はい。それでお願いします」
「あんちゃんが設計するってか?! 大丈夫か?!」
「あの~、コチラの方は?」
「俺は大工のカムってんだ! よろしくな、あんちゃん!」
大工なのにカム!
カムって回転運動を上下運動とかに変換する機構の事だよな。
あっ、じゃあ大工でカムってのも間違いじゃ無いのか?
「で、俺は何を作れば良いんだ?」
「それは福田さんに聞いてください」
「そうか。じゃあ、あんちゃん、何を作れば良いんだ?」
「え~とですね。馬車から車輪を取って、代わりに板を付けるんですけど。で、それを馬が曳くんですよ」
「何言ってんだ? 全然判らないぞ? 馬車から車輪取ったら馬しか残らないぞ、がははは!」
う~ん、説明が難しい。
しょうがないから絵を書いて見せたが、それでも判らないって言われた。
俺の絵がヘタだからだろうか。
面倒になったので、紙を板に見立てて説明する。
「この紙が板だと思ってください。で、こういう風に前をカーブさせた物を2枚用意してください」
紙の前側を上に向けて少し反らせる。
するとやっと納得したのか、笑いながら俺の背中をバンバン叩いてきた。
「がはははは、そういう事か! 最初っからそう言えよ!」
「言ってたと思うんですけど……」
「それなら船を作った時のがあるな。ちょっと待ってろ!」
そのまま走り去ってしまった。
残された俺とギルドマスター。
「話はついたようですね。では私は業務に戻ります」
「えっ?!」
そのまま颯爽と去って行くギルドマスター。
俺は一人ぼっちですか?
置き去りなんですね。
地面にのの字を書いてると、カム大工が戻ってきた。
デカいリアカーを曳いて。
「あんちゃん、待たせたな!」
「あの、そこには何が?」
「何って、あんちゃんの言った板が乗ってるのよ! 取り付ける為の大工道具もな!」
そりゃそうだ。
いくら大工さんでも、道具無しでは加工出来ないよね。
「こんな板で良いか!」
「反りは良いですけど、ちょっと小さいんじゃないですか?」
「じゃあこれか!」
「大きすぎますよ! 子供なら10人は乗れるサイズじゃないですか!」
大小の2種類しかないのかよ!
中を出せ、中を!
「じゃあどれくらいなら良いんだ?」
「長さで1mくらいあれば良いんじゃないですか?」
そう言うと、デカいサイズの木を削りだした。
そうか、大きいのは切れば良いんだもんね。気づかなかったわ。アホか、俺。
そして、大小しかないのか、とバカにしてごめんなさい。
「ほれ、これでどうだ?」
「あぁ、良いんじゃないでしょうか」
「で、これをどうするんだ?」
「馬車の車輪を取って、そこに固定してください。
あぁ、馬車の今の高さはキープしてくださいね?」
「そういう事か。任せとけ!」
さすが、ギルドマスターが呼んだ大工だけあって、作業が早い。
あっという間に取り付けてしまった。
「で、これをどうするんだ?」
「これで完成です。これを馬が曳くんですよ」
「荷物を載せてか?」
「そうですね」
「バカヤロー!」
えっ? いきなり怒られたぞ?!
俺、何かやったっけ?
「そういう事は先に言え! これじゃ強度が足りなくて壊れるじゃねぇか!
もっと頑丈にするぞ! 手伝え!」
「は、はい!」
そういう事か。
確かに現状は反った板に馬車が乗ってるだけって感じだもんな。
ん? 俺、最初に馬が曳くって言ったよね?!
怒られ損じゃないか?!




