不審者
ギルドに向かってる時に気づいた。
そういえば俺、場所は聞いたけど行ってないな。
何故か警察に追われたんだったわ。
いやだなぁ、ギルドへの途中に警察署があるじゃんか。
もう追われる事は無いと思うけど、注意しながら行こう。
警察の近くに来たらコソコソと離れた道を進み、やっと冒険者ギルドへ到着。
う~ん、ハタから見れば犯罪者の行動だよなぁ。フードも被ってたし。
パーカーとかって最初からフードが付いてるけど、被ってると怪しく見えるんだよね。不思議。
そういえば、前世でヒドイ花粉症持ちの友人が居た。
あいつは春になると、マスクして花粉を防ぐ眼鏡をかけてた。
服装は帽子を被った上にパーカーのフードを被ってた。
家に着いたら入る前に脱いで、花粉を持ち込まないようにする為って言ってた。
本人は完璧な防護のつもりなんだが、傍目にはただの怪しい人だったよ。
夜に歩いてたら、職務質問を通り過ぎて連行されるレベルだったわ。
おっと、バカな事を考えてる場合じゃなかった。
さっさとギルドに入らないとね。
ギルドの建物内は他の国と大して変わりが無かった。
当然の様に、受付はおっさんだし。
ラノベのような、綺麗な女性が受付をしているギルドは無いのだろうか!
現実は夢も希望も無いよなぁ。
がっかりしつつ、受付に行く。
おっさん相手で悲しいが、依頼はちゃんとしないとな。
「すみません、良いですか?」
「おう。ギルドへようこそってやつだな。どうした? 依頼を受けるのか? それとも出すのか?」
「え~とですね、ニーベル国のカジノの町で依頼を受けまして」
「おー! 遠い所から来たな。ご苦労さん。で?」
「どこに行けば良いのかを聞いてなかったので、ココに来ました」
「おいおい、おっちょこちょいだなぁ。そんなんじゃあ、冒険者はやっていけないぜ?」
「すみません……」
「しょうがないなぁ、判る範囲で調べてやるよ。ほれ、冒険者証を出しな」
あぁ、また入る時に見えるようにするのを忘れてたよ。
常に出しておかないとダメだな。今度からはそうしよう。
俺は首から冒険者証を外しておっさんに渡した。
「お、お前! 赤色かよ!!」
「ええ。そうですけど……何か変ですかね?」
「いやいや! 変じゃ無い! 色々言って悪かったな」
「え? 何がですか?」
「いや、気にしてないなら良いんだ……。お前、変わってるって良く言われるだろ?」
「え~、そうですか?」
非道とか外道とかは言われた事はあるけど。
何でだろ?
「言われた事は無いと思いますが。何でです?」
「赤色となると、荒くれ者が多いからな。お前さんのような低姿勢のやつは珍しい」
「そんなもんですか」
偉くなったからって威張るヤツは三流だよ。
一流は偉くなるほど謙虚になるんだよ。
893も下っ端ほど威張り散らすだろ?
政治家もさ……いや、これは違うな。前世では老害と言われるほどダメなヤツが多かったわ。
「で、依頼の事なんですが……」
「おお、すまんすまん。すぐに調べるわ。え~と、福田哲司だな。福田……哲司……?!」
「そうですけど、何か?」
「おおおお、お前、福田哲司かよっ!!」
「は、はい」
「ちちちちょっと待ってろ! いや、待ってて下さい!!」
おっさんは慌てて2階に上がっていった。
あっ、このパターン知ってる。
ギルドマスターの部屋に通されるやつだわ。
と、思ってたら、おっさんがおっさんを連れて降りてきた。
あら、ギルドマスターが来るパターンでしたか。
「貴方が福田哲司さんですか?」
「はい、そうです」
「依頼を受けて来た。間違いないですか?」
「ええ」
「依頼の事は知っています。まぁ、私が受けたのですけど」
「そうなんですか」
「おっと、忘れてました。私はここのギルドマスターのオタベと言います。よろしくお願いします」
オタベさんか。
何か、昔のゲームでさ、実在の人の本名が使えない時に代わりに使う名前みたいだ。
岡部とかの代わり。で少しギャグっぽい名前にされるんだよ。
まぁ、関係無いだろうけど。
「では、行きましょうか」
「えっ? 何処にですか?」
「勿論、依頼を出した人の所にですよ」
速攻で、城行きが決まりました。




