指名依頼
「とにかく、まずはギルドに来てくれないでしょうか?」
「あ、はい、そうですね」
マスターと共にギルドに行く。
マスターの部屋に入ると、引き出しから1枚の紙を取り出した。
「これに依頼が書いてあります」
「何々、えっと~、……何コレ?」
「いや、書いてある通りですよ?」
「だって意味が判らないですよ?」
書いてある内容はこうだ。
『セキハイムで国技としてのギャンブルを作りたい』
今、本当にたった今、新しいギャンブルを作ったばかりですが?!
しかも国技?!
「……読まれました?」
「勿論読みましたよ。依頼の内容もしらずに指名相手に話を持っていきませんよ」
「じゃあ判るよね! 今ギャンブル作ってるよね!」
「そうですね」
「そもそも、何で俺なんですか?!」
「それは知りませんよ。何かされたんじゃないですか?」
「セキハイムの王様に会った事さえ無いんですよ?!」
こういう依頼がタイムリーに来るっておかしくないか?!
俺の運は何をやってるんだ! 動いてるのか?!
……待てよ?
今、思ったんだが。
この世界で生きて行くのには、当然だけど何処かに住む必要がある。
そしてこの世界、知ってる限りでは王制だ。
そう考えると、王様と仲が良い方が生活は楽。
今まで、色々な王様と会って親交してきた。
国に行ったのに会ってないのはセキハイムの王様だけだ。
その王様から依頼が来てる。
こう考えると、実は運が作用してるのか?!
運が作用しているから、色んな王様と会う事が出来て親交を深める事が出来る。
そうか! そういう事なのか!
王様と会って、無茶振りされて困ると思ってたが、実は良い方向に進んでるって事なのか。
こう考えると、この依頼も受けた方が良いって事だよな。
もしも運が作用してるとすれば、ここで断ってもまた会う機会があるそうだけど。
あれっ? 前に聞いた事があるけど、指名依頼って断れたっけ?
「えっと、指名依頼って断れましたっけ?」
「え~?! 王様からの依頼を断るの?! 一応赤色からは断る事が出来るけどさぁ」
「いや、聞いてみただけです」
「覚えておいてよ!
赤からは指名依頼を拒否する権利があるんです。その代わり、強制依頼への参加も義務になるんですよ。
指名依頼は名前の通り、名指しでの依頼。これは拒否出来ないんですが赤以上になれば拒否出来るんです。
強制依頼ってのは、基本的には国からの依頼なんです。戦争以外で腕の立つ物が必要な時に出る依頼ですね」
「戦争以外ですか。戦争は断るのですね」
「当たり前ですよ~。冒険者は戦争する為に居るんじゃ無いんですから」
「でもそれ以外って、何があります?」
「昔あったのは、大森林で遭難した者の捜索依頼ですね」
なるほど。何か昔にも、こんな話をどっかのギルドマスターとしたなぁ。
つまり、今俺は赤色だから、断る事は出来ると。ん? 相手は国じゃないの?
「あの~、これは国が相手ですよね? 強制依頼じゃないんですか?」
「国が相手じゃないですよ? 王様からの依頼です」
「いやだから、王様からの依頼って事は国からの依頼にはならないんです?」
「国からの依頼なら、国の承認があってから国から出されます。
今回のは王様個人の依頼ですね」
「内容は国が関係してそうですけど?」
「そこまでは判りませんよ。王様に聞いてください」
ヒドいな! 調べておいてよ!
詳しくは会って聞けって事ね。はいはい、そうしますよ。
「受けてくれますよね?」
「何で受けさせたいんです?」
「王様からの依頼ですよ? 断られたなんてギルドマスターとしては問題です!
もし断るなら、他のギルドでお願いします!」
うわっ! 言っちゃったよ!
判りましたよ。受けますよ。




