カジノの町の冒険者ギルド
辛さで転げまわっているサキを放っておいて、王都の家に帰った。
トムさんにだけはコッソリと事情を話しておいたので、フォローするだろう。
ヒタキさんには親指を立ててグッとポーズをしておいた。
ヒタキさんもニヤリと一瞬笑い、一礼してくれた。
さすがです。
その後、ヒタキさんから話があると言うので、リビングに移動。
何だろ? パーティーで遊ぶ物として売り出す?
「カジノの町のメイドから連絡がありました」
「ん? 何かありましたか?」
「福田さんに冒険者ギルドから相談したい事があるそうです」
「えっ? 何だろう? 明日にでも行ってみるよ」
依頼をしろって苦情かな?
俺、冒険者なのに、依頼を出す方が多いからなぁ。
全然依頼を受けてないや。剥奪されるとか?
いつ話が来たのか知らないけど、早く行った方が良さそうだ。
翌日。
皆でカジノの町に行く。
俺はその足で冒険者ギルドに。お供はカンダさんだけ。
女性陣は休みにしたので、買い物だそうだ。
本来はカンダさんも休みなのだが、女性陣が買い物と聞いて「護衛は必要です!」と迫ってきたから許可した。
どれだけ嫌なのだろう? 検証しようとは思わないけど。
さて、ギルドに行く為に歩き出したのだが……場所はどこ?
よく考えたら、俺ってカジノの町の冒険者ギルドに行った事無い!
登録したのはオオキの村だし、護衛依頼出したのもオオキの村だ。
一番長く居る町なのに……。
カンダさんに聞いても知らないとの事。
まぁなぁ、ギャンブルしに来る所だもんな。
冒険しに来る人って少ないよね~。
依頼があっても、せいぜい移動の護衛くらいじゃないか?
しょうがないので、またサガワさんのホテルに行く。
入り口で俺の顔を見ると、すぐにツバキさんが飛んできた。
本当に、比喩じゃなく、飛んできた! 魔法か?! 魔法なのか?!
「福田様! いらっしゃいませ! 本日のご用件は?!」
「落ち着いてくださいよ」
「福田様が居られると、落ち着いて居られません!」
うわ~。疫病神みたいな言い方は止めて欲しいな。
疫病神って居るのかな? 今度神様の誰かに聞いてみよう。
「ちょっと教えて欲しい事があって来ただけですよ」
「何ですか?」
「道を教えて欲しくて」
「何で警察に行かないんですか?」
「……警察の場所も知りませんので」
「……そうですか。警察は町の中心にありますよ。で、どこに行きたいのですか?」
「冒険者ギルドです」
「あれっ? 福田様は冒険者ですよね?」
「そうですけど……」
「え~と。まぁ良いです」
「言いたい事があるんなら言ってくださいよ!」
「いえいえ、意味が判らないとか思ってませんよ? 冒険者ギルドは目の前の川を南に5分26秒ほど下ったらあります。
緑の屋根の3階建ての建物なので、すぐに判ると思いますよ」
「……判りました。行ってみます」
「馬車出しますか?」
「歩いて5分で着く所に、馬車は要りませんよ!
そんなに早く追い出したいんですか?!」
「……そんな事は無いですよ?」
だったら目を逸らさないで欲しいね。
おかしいな、もっとクールビューティーな人だったと思ったのだが。
何がここまで狂わせたのだろうか?
疑問に思いつつも、冒険者ギルドを目指した。
5分ほど進むと、確かに緑の屋根の3階建ての建物がある。
入り口に到着したのは、きっかり5分26秒だった……。
何か、優秀すぎて恐ろしいな。
中に入るとカウンターに男性が居たので話しかける。
「福田ですけど。呼ばれたそうなので来ました」
「ええと、福田哲司さんですか?」
「そうです」
「おおっ! 少々お待ちください!」
そう言ってカウンターの男性は2階に上がっていった。
その間に中を見渡す。うん、朝9時だというのに人が居ないわ。
「お待たせしました。ギルドマスターがお会いしますので、2階にどうぞ」
えっ? ギルドマスターが相手なの?




