悟り
トムさんの家を出て、トムさんの案内で道を進む。
前に行ったエレベーターがあった洞窟とは別の方向に行くみたいだ。
着いた先はこれもまた洞窟だった。
洞窟の中に入ると、少し広い部屋に到着。
そこには穴が3箇所あった。
多分だけど、1箇所はタローの所で1箇所はジローの所に続いているのだろう。
って事はもう1箇所はユニコーンの所かな?
死者の管理施設同士が繋がってるんだと思われる。
俺達はトムさんの先導で真ん中の穴に進んだ。
1分ほど歩くと、さっきと同じ様な場所に出た。
そのまままっすぐ進むと、そこにはミノタウロスのジローが待っていた。
「トム以外が通路を通ったのが判ったので来てみたが、福田だったとはな」
「久しぶりです、ジローさん」
「うむ。おっ、その鎧は角を使ったものだな?」
「そうです。ありがとうございました」
「して、今回は何の用だ?」
「角ください。くれないとイタズラしちゃうぞ?」
「ハロウィンかよ!」
「それは冗談ですよ。本当は仏様からお告げがあったので来ました」
「勇者の件か?」
「それとは別件です。それに勇者を連れてくるなら、ちゃんと1階から入りますよ」
「それもそうか。で、仏様からのお告げとは何だ?」
俺は用件をジローに話した。
「そういう事か。頂上にはそこにある階段を登ればすぐだ」
「そうですか。あっ、丁度2人が揃ってるんでちょっと聞きたい事があるんですよ」
「何かな?」
「シヴァ神の加護ってどんなのですか?」
「「シヴァ神?!」」
「ええ。えっ、何か?!」
「あの人、滅多に加護なんか与えないわよ?!」
「そうなの? 凄くあっさりとくれたけど? まぁ、雷に打たれたけどさ」
「福田さん!」
「えっ?! 何よ、カンダさん。いや、皆か? どうした?」
「昨日雷に打たれたんですよね?!」
「そ、そうだけど……何?」
「自分達も買い物中に打たれました……」
「……マジで?!」
慌てて皆を魔法で鑑定してみる。
あっ! 皆に『シヴァの加護』って付いてる!!
どうなってんだ? 俺だけじゃなかったのか?
まぁ、あの神様は雑そうだったもんな。こういう間違いをしてても不思議じゃないわ。
俺だけに与えるつもりだったのに、俺関連の人にも与えてしまったに違いない。
ま、困る物じゃないハズなので、ありがたく貰っておこう。
仏様とかに話したら取り上げられるかもしれないしね。
「え~、何か皆が貰ったみたいです。で、どんな加護ですか?」
「皆が……? 全員? 加護? どうして?」
「どうしてかは本人に聞いてくださいよ。で、いい加減、どんな加護なのか教えてくださいってば!」
「え~とね、技術がAになる加護よ」
「あ~、やっぱりそんなんですね」
「あっ、確認した? 正確に言えばランクが無くなるって事なんだけどね」
「ランクが無くなる? どういう事です?」
「今はAからFまであるじゃない?」
「そうですね。鑑定すると、例えば『剣技』なら『剣技(A)』って表示されます」
「Fが覚えたてで、Aが極めたって事なんだけど。
ランクが無いので、覚えるとすぐに極めてしまうの。
鑑定される事もあるからA表示になってるけど、本当は『-』表示なのよ」
「「「「え~~~~!!」」」」
俺の仲間の驚きっぷりがハンパじゃない。
そりゃそうか。何でもFが付くくらいに修行すれば、自動的に極めれるんだもん。
こんな楽な事は無い。
アホみたいな加護だ。
さすが有名な神様は、加護もムチャクチャだ。
「加護の内容も判りました。じゃあ登りますわ」
「ちょっと! 軽すぎっス!」
「ありえないですよ?!」
「いや、俺に言われても。それに貰った物だからどうしようもないでしょ? 諦めようよ」
「諦めが早すぎるわよ!」
「いや、諦めというよりも、悟り?」
「さ、悟り……」
そう、悟りの境地だ。
神様のやる事にイチイチ悩んでたってどうしようもないんだよ。
天災だと思うしかないさ。




