王様登場
ネチネチと小言を言われ続ける事、1時間。
期限よりも1時間も早くナグラさんが帰ってきた。
しかも謁見の間で見た文官の人を伴って。
あっ、宰相だったっけ? 名前知らないや。
「私はこの国の宰相をしている、ウラキと申します」
「ええええー! ウ、ウラキ様?! どうしてここに?!」
「この度、誤認逮捕があったとナグラ様より伝えてもらいまして。
誤解を解く為にやって参りました」
「えっ?! じゃあ、本当に……」
「ええ。福田様は本当に王様がお招きになられました。
その証拠に、もうすぐ王様も来られます」
「「え~~~!!」」
俺と取調官の声がハモってしまった。
宰相が来るだけでも大事なのに、王様が直々に来るだと?!
意外にフットワークが軽いな。
「王様は『この国の事を何も教えなかったこちらにも不備があった』と仰られてます。
なので、自身で誤解を解く為に、そして謝罪する為に訪問するそうです。
ただ、単独で来る事が出来ないので、私がナグラ様と先行して来た次第です」
だから早かったのか。
別に宰相さんだけで良かったのに。
王様まで来ると事態が大事になってしまう。
今更止める事は無理だけど。
それから20分、宰相を交えて会話してる。
密漁の事は誤解だったと判明したし取調官の人も謝ってくれた。
もう問題は無くなったも同然なので帰りたいのだが、とうとう王様が到着した。
皆が平伏する中、ゆっくりと現れる。
「皆の者、表を上げよ。さて、経緯は聞いておる。すまなかったな、福田殿」
「いえ。調べなかった俺が悪いのです」
「福田殿が船を持っているのは知っていた。こういう事も考えていなかったこちらの落ち度よ。
さて、取調官よ。この度の福田殿の事は不問にする。よろしいか」
「ははっ!」
「そなたの事は責めてはおらぬ。職務を全うしただけの事ゆえ」
「あ、ありがとうございます!」
「では、福田殿には取った魚と船は返却する事。それと漁業権を与えるように」
「ははっ! 手続き致します!」
「うむ。よろしく頼む。では少し福田殿と話があるので外してもらえるか?」
「判りました! 失礼します!」
取調官は頭を下げたまま部屋を出て行った。
宰相もついて行ったので、手続きをするんだと思う。
「ふう。堅苦しいと疲れるな」
「別に漁業権とか良かったのに」
「持っていて困る事は無い。逆に持ってないのに船に乗ってればまた疑われるぞ?
費用もこちらで払っておくから気にするな」
「そこまでされると。逆に気持ち悪いんですが」
「ふむ、そうだな。では、福田殿の船に乗せてもらおう。
それでチャラにしようじゃないか」
「それが最初からの目的だったな?!」
「いやいや、偶然だよ。ツナザメを獲れる船。気になるじゃないか」
ちっ、やっぱり侮れない王様だ。
こっちは助けてもらったので拒否出来ないじゃないか。
そのまま王様と部屋を出て船に向かうが、何故か船着場が騒がしい。
しかも俺の船がある辺りに人盛りが出来ている。
そこにはさっきの取調官と宰相も居た。
宰相に声をかける。
「どうしたのですか?」
「船を登録をする為に操舵席に許可証を張りに来たのですが、見えない壁があるようで誰も乗る事が出来ないのですよ。
そこに倒れている者が銛で突こうとした瞬間、パッタリと倒れてしまったのです」
あ~、防衛機能が作動してるな。
死んでないだろうな? 良かった、気絶してるだけらしい。
こうなったら俺も入れないのか?
人を掻き分けて船に進むと、あっさりと乗り込む事が出来た。
カンダさん達も普通に乗り込む。
周りがざわめいている中、王様が近寄ってきて簡単に乗り込んでしまった。
う~ん、船の防衛機能も俺と同調しているのかな?




