密漁騒ぎ
俺達は囲まれたまま、帝都に戻り漁業ギルドに連れて行かれた。
下船した時に、くれぐれも船には触れるなと通達しておいた。
現在密漁扱いなので、船も差し押さえられてるんだが、出来れば触れないで欲しい。危険だから。
そして、全員で取り調べの最中です。
「どこの国の人間だ?」
「え~、一応ニーベル国になると思います」
「曖昧だな。ふん、どうせウソなんだろうが」
「なんでウソなんですか?!」
「あの国には海が無いではないか! しかもここから遠い!」
「そりゃ確かにそうですけど。ウソじゃないですよ」
「密漁するやつは大概ウソをつくもんだ」
「だから密漁になるって知らなかったんですって!」
「はいはい。で、目的は?」
「だから、釣りですよ」
「釣りでツナザメが釣れるなら誰も漁業なんかやらんわ!」
あれ、ツナザメって言うのか。
日本語なのか英語なのかはっきりして欲しいな。
混在してると、何か気持ち悪い。
しかし、どうやったら疑いが晴れるだろうか?
言ってる事は全部本当なのだが、どれも信じてもらえない。
まぁ、俺が反対の立場だったら信じないだろうけど。
「この国に来たばかりだから、漁業権の事を知らなかったんですよ!
それに貴方の言葉を使うなら、海の無い国出身なら漁業権なんて知る訳無いですよね?!」
「来たばかりねぇ。その割には船まで用意して準備周到だがな。
何しに来たんだ? 密漁だろ?」
「違います! 王様に呼ばれて来たんです!」
「……お前、ウソつくならもっと信憑性のある事を言えよ。
誰が信じるんだ、そんな話。バカにするのもいい加減にしろ!!」
どこまでも平行線だ。
こっちは真実を話してるが、あっちは全てウソだと思っている。
何か証明する物を出すしかないんだろうけど。
3カ国から貰った、外交官の書状を出すか?
でもあれは外交官だという事を証明するだけで、身分は判明するがそれだけだ。
ここで思い出したのが、王様から貰った目録。王様の印もある。
王族との繋がりを示すのには完璧な物じゃないだろうか。
問題は、内容に漁業を認める事が書いてない事だが。
でも、この国ではこれしか手が無いな。
「ちょっと、これを見てください。
王様から直々に渡された物です。ほら、ここに王様の印もあるでしょ?」
「む、た、確かに。……だが、これも捏造の可能性がある。
それに本物だとしても、ダンジョンの事は書いてあるが、漁業の事は書いてない」
「事実です! 城に確認を取ってもらえれば判ります!」
「お前、書類を捏造してるのに城に確認取って良いのか?
間違い無く死罪だぞ?」
「事実だから大丈夫です!」
「アホか。そんな事したら、俺まで罰せられるわ」
ぐぬぬ、この石頭め!
言い合いをしていると、キジマさんから援護射撃が。
「ちょっとお待ちください。
もし、この書類が事実だとしたらどうします?
この国の事をよく知らない他国の人間を王様が呼び、褒美の目録を渡される人物ですよ?
その人を勝手に罰したと後で王様が知ったら、貴方はどうなるんでしょうね?
怒られる程度で済みますか? 解雇、下手すれば投獄もありえますよ?
そこまでの責任が取れますか?」
「むむむ……だが、ウソに翻弄されて報告しても怒られる。
そうだ! こうしようじゃないか!
お前達の一人が城へ行け。そこで話をして来い。
事実なら城から誰か派遣されてくるだろ。ウソならそのまま逮捕されるだろうがな。
なので、期限は2時間だ。2時間で帰らないならお前達は密漁の罪で牢屋行き。
仲間が大事なら逃げたりしないだろ? どうだ」
おっと、まさかここで『走れメロス』的な話が出るとは!
しょうがない、俺が行くか。
俺なら飛翔の靴で空を歩いて行ける。
障害物が無いので、早いはずだ。
名乗ろうとしたが、拒否された。
責任者扱いされてるので、お前は逃がさないって事らしい。
結果、一番若いナグラさんが指名された。
大丈夫かな、心配だ。主に無礼を働かないかという点で。




