また島の話
「え~と、知らなかったですか?」
「うむ。
福田殿は何でもありだな。もはや驚かんよ。そういう人間だと思う事にする」
「それはそれでどうかと思うのですが……」
「こちらの秘密も知っているのだ。お互いの秘密を握ってる方が裏切りが無くて良いではないか?」
「た、確かに。では内緒ですよ?」
「内緒ついでに聞いておこう。“島”とはなんだ?」
「はぁ?! 誰からそんな事を?!」
「親書に書いてあったぞ?」
そういえばロッツギルに行った時も、俺の個人情報が書いてあったと聞いたな。
その時は島の話は出なかったが、書いてあったと思うべきだな。
あの王どもめ~!
「で、島とは何だ?」
「……個人所有してる島があるんです」
「ほう! 国ではなく、個人で所有しているか! どんな島だ?!」
「え~と、この城に張ってある結界よりも強力な結界があります。
後は、自動防衛機能があるので、攻撃すると反撃されます。多分殲滅します」
「……それは島か? 軍事拠点では無いのか?」
「いや、島ですよ?! 海水浴出来るビーチもあるし、温泉もあるし! 別荘地のような所ですよ?」
「ほうほう。それにしても本当にビックリ箱のような人だなぁ。では、オレも行けるのかな?」
「宝物庫に入る時に魔法石で鍵を開けましたよね?」
「ん? そうだが、ソレが何か関係するのか?」
「それの強力版の扉があって、それをくぐらないと行けません」
「それの鍵は?」
「個人認証なんですよ」
「個人認証?」
「細かい説明は俺も良く判ってないので出来ませんが、登録した人だけしか通れない扉だと思ってください」
「むりやり通ったらどうなるんだ?」
「海の中に転移されます」
「海に、ではなく、海の中?!」
「ええ。だから、死ぬでしょうね」
「大丈夫なのか、ソレ」
「大丈夫だと思いますよ?
あぁ、忠告しておきますね。その扉は俺と繋がってまして。
俺が『この人はヤだなぁ』と考えると通れなくなりますんで」
「またまた~。そう言って脅してるだけだろ?」
「いえ。ノートルダムの王がそれで通れなくなりました。
疑うなら聞いてみてください。事実だと判りますから」
「……マジか」
先に伝えておけば、俺に対して変な事をしてこないだろう。
まぁ、親書に色々書いてあっただろうから、バカな事はしないはずだが。
「その島は、どうなんだ?」
「そうですね、先に言った理由で安全です。
それと結構南にあるので暖かいです。本当に別荘地って感じです」
「そうか。で、オレも招待してくれるんだろ?」
「うぐっ……まぁ、いずれは」
「ははは。無理にとは言わんよ。まだ知り合って間もないからな。
だが、行きたがっている事は覚えておいてくれ」
「はぁ、判りました」
変な約束してしまったな。
まぁ、どうせ2国の王は来るんだ。今更1国増えたって変わらないだろ。
ん? ロッツギルのジジイも来たがるんじゃないか?
……言われなかったので、放置しよう。
宝物庫を出ると、最後に王様から一言。
「これで、褒美は終了だ。
家の完成予定は1週間後だ。それまでダンジョン探索でもするなりして過ごしてくれ。
宿はあのまま使ってもらってかまわない」
「え~と、宿が豪華過ぎるので、替えてもらってもよいですか?」
「すまんな。それも王としての威厳を保つ為に必要なのだ。
外交官、しかも国に多大な貢献をした者を普通の宿に止めると風聞が……」
「国も大変なんですね……」
「そうなのだよ。すまないが了承してくれ」
「判りました。諦めます」
「しかし、普通は豪華な宿だと、喜ぶと思うのだが」
「分不相応なので。豪華すぎると気後れするんですよ」
「王に対してその態度なのにか? 大物なのか小心者なのか判らんな」
「小心者ですよ」
「そういう事にしておこう。では、また連絡するからな」
「はい」
こうして、また豪華な宿に戻った。
さて、明日からは何をしようかな?




