報酬の話
すると王様は大事そうに1冊の本を持ってきた。
「これに今までで判っている事が書いてある。参考にしてくれ」
「これは持って行っても良いんですか?」
「さすがに持ち出しは困るな。書き写すのはOKだが。
ダンジョンに持っていかれて、万が一死なれたら回収出来ぬからな。
それに城にダンジョンがあるのは秘密なのだ。持ち出されてはバレる可能性がある」
「そうですね。判りました」
「部屋には持って行っても良いぞ。仲間と相談する必要もあろう。
終わったらここに戻してくれれば良い」
「いつダンジョンに行けば良いですか?」
「準備が出来たならいつでも良い。
その時に教えてくれれば、何を差し置いても優先する」
「え~と、じゃあ一応明日って事で」
「そんな早くか?!」
え~、だって、別に用意する物なんか無いもんな。
必要な物はマジックボックスに入ってるし、忘れ物があれば取りに戻るだけだし。
「そうですね、明日の朝9時でどうでしょうか?」
「わ、判った。それで調整しよう。よろしく頼む」
おっと、重要な事を1つ忘れていた。
これの為に引き受けたようなものなんだから、話しておかないとね。
「1つ良いですか?」
「うむ。何だ?」
「成功した場合の報酬なんですが」
「望む物を与えようと思っているが、何か希望でもあるのかね?」
「あります」
「そうか。オレの娘と結婚させて跡取りにさせようとも思っていたが」
「それは遠慮します」
危ない危ない。
何で俺が帝国を治めないといけないんだ。
いくら帝王って呼ばれてても実際にはなりたくないぞ。
いや、帝王って呼ばれてる事も認めてないけどさ。
「グランザム帝国内のダンジョンに自由に入る許可を下さい」
「はっ?! そんな物で良いのか?!」
「冒険者ですので。それが一番の報酬ですね」
「……欲の無い事だ」
いやいや、欲だらけですよ。
未知のダンジョンですよ?
エリクサーなんかが未発見なダンジョンがあるくらいな。
しかも、素材のダンジョンや出汁のダンジョンなど、偏りのあるダンジョンが多い。
きっと他のダンジョンも、何かに偏ってると思う。
国の許可があれば堂々と入って好きなだけ取れるじゃないか!
「ついでにグランザム内のダンジョンのある場所を書いた地図も下さい」
「……効率良く回るつもりか?」
「そうです」
「……良かろう。では報酬はそれで良いな?」
「ええ。あっ、そうそう『それだけでは申し訳無いので』とか『特別に』とか言って、勝手に報酬を増やさないで下さいね?
大概、そういう場合って何か厄介な物を押し付けられたりしますから。
ダンジョンの立ち入り許可・地図、この2点だけですよ?」
「抜け目の無い事だな。判った判った、勝手に増減させないと誓おう」
さっき娘の話してたからな。
追加報酬として与えようとか言い出しかねない。
先に潰しておかないとね。
誓ったんだから、さすがに反故にはしないだろう。
まぁ、その場合はもう一度ダンジョンに行って元に戻してくるだけなんだが。
「では福田殿、頼んだぞ。
そうそう、必要な物があれば、何でも言ってくれ。
君達の部屋に執事長を行かせる。それに言えば揃えてくれるだろう」
「判りました。何か頼むかもしれません。お願いします」
そう言って王様と別れて部屋に戻った。
必要な物ねぇ……。色々な料理でも貰っておくか。




