王との昼食
「儀礼は面倒だという事だったので、このような食事になった。すまないな」
「いえいえ、こちらこそ我侭を言ってしまい、申し訳ございません」
「こちらが招いたのだ。客には配慮するのが当然。気にせずとも良い」
この王様、今まで出会ったどの王様よりも威厳がある。
畏まらないといけない雰囲気があるのだ。
いや、王様ってそんなもんか。
他の国の王様がおかしいだけかも。
ギャンブル好き、魔法狂い、戦闘狂、好々爺……うん、他が変なだけだ。
当たり障りの無い会話だけで、昼食は終わった。
料理はとても美味かった。
王様自身が食い散らかすような食べ方をしてたので、俺達は気兼ね無く食べる事が出来た。
意図的にしてるのだろうが、なかなか出来る事じゃない。
メイドさん達が紅茶を煎れてくれたので、それを飲みながら歓談の時間になった。
この部屋には俺達と王様以外、誰も居なくなった。
防衛的に、それで良いのか?
ま、何でこの王様は俺を呼んだのかを聞かないとな。
「福田殿はギャンブル大会で優勝したのに、表彰式には出なかったとか」
「……いえ、腹を下しまして」
「ふふ、そのような誤魔化しは言わなくて良い。事実は違うのだろ?」
「いえ、そのような事は……」
「気にするな。ここでの話は何処にも漏れる事はない。何か用事があったのだろう? 違うか?」
「え~と……」
「用事の内容までは聞かぬよ。その様子を見れば間違い無いようだしな」
ヤベぇ。この王様、聡明な人だ。
1を聞いて100を知るタイプじゃないか?
ヘタな事は言えないぞ。いや、言わなくてもバレるのか?
「まぁ、ニーベル国の動向を見るに、ダヒュテムでの事が係わってるのだろうがな」
「え~、何故そう思われるのですか?」
「その後、ニーベル国に戻る人の中に居なかったそうではないか。
という事は、セキハイムに残ったか、他のルートでサイラス国かコルラド国に向かったという事だ。
ノートルダムはニーベル国に戻る途中にあるのだから、そこに用事があるなら共に帰るだろう。
サイラス国は荒れているから向かうなら一度帰ってからだ。
そうなれば、残ったかコルラド国に向かったか。
その後に、ニーベル国とコルラド国が共同でダヒュテムに関する声明を出した。
ならば密名を受けてコルラド国に行ったと考えるのが当然だな」
「別ルートで帰ったとは思われないんですか?」
「国の名誉でもある表彰式に出ないほどの急用だ。
帰るにしても陸路よりも海路を使って、一度コルラドに向かった方が早い」
理路整然と考えられている。
何も言い訳が出来ないわ。
どこまで知ってるんだ、この王様。
肯定も否定も出来ずにウロウロしてると、王様がこちらを見ながらニヤリと笑った。
「いや、福田殿がどうしたのかを聞くつもりは無い。
ギャンブル大会の事が聞きたいのだよ」
「は、はい」
「参加した者から聞けば、福田殿は全くイカサマをせずに圧勝したのだとか。
そして、昨日は兵士を相手に負け無し。その力を見せてもらいたいのだよ」
あっ、判った。昨日の兵士は仕込みだな?!
俺の実力を知りたいからって、絡ませたんだろ?!
だから国を守る兵士なのに、何故かチャラい感じだったんだ!
王が招いた人なら国賓だ。兵士達が国賓に絡む訳無いもん。
もし本当にチャラいとしても、普通なら上司が止めるはずだ。
誰も止めなかったどころか、増えていったもんな。
圧勝しちゃったよ……。どうしよう……。
「実はな福田殿。グランザムには、1つ大きな秘密があるのだよ」
「は?」
「それを打破する為に、福田殿の力を借りたいのだ」
「ええっ?!」
話が変な方向に向かいだしたぞ?
秘密?! それを俺が打破する?
ギャンブルに強いだけ(って思われてるはず)の人間が?
どういう事?




