昆布狩り
翌日、畑は荒らされる事は無かった。
晴れて依頼終了である。
今は村長さんに連れられて、ダンジョンの前に来ている。
馬車も持ってきた。村に置いておいたら怪しいからね。
俺達がダンジョンから戻るまで、レイに馬車を土壁で隠しておいてもらう。
さすがに収納するのは、村長の目もあるしやめておいた。
早速ダンジョンアタックだ!
1階はここも同じでスライムしか出ない。
ドロップ品も、懐かしの丸い石とたいまつの芯。
雑魚なので、運も使わずに進む。
目的の2階に到着。
タブレットで調べた所、この階には2種類のモンスターしかいない。
その情報はこれだ。
・・・・・・・・・・
ゼリースライム
レベル3
スライムの亜種。白色をしているのですぐに判る。攻撃は体当たりのみだが、柔らかい体なのでたいして痛くない。
弱いくせにすぐに向かってくる。子供はコレを倒してレベル上げや小遣い稼ぎをする。
ドロップ品は産地によって味が微妙に違うらしい。
ノーマルドロップ「塩」
レアドロップ「砂糖」
ヒトデン
レベル10
星型のモンスター。体長は30cmほど。
ウネウネと動く触角が気持ち悪い。
攻撃は、中央にある口で噛み付く。
弱点も口で、口の中に剣を刺せば一撃。
ノーマルドロップ「昆布」
レアドロップ「鰹節」
・・・・・・・・・・
こちらもお馴染みのゼリースライムだ。
そして目当てのモンスター、ヒトデン。
やっぱりヒトデじゃないか。
ノーマルドロップが昆布なのは知ってたが、レアドロップが鰹節とは!
ツイテるぜ! ってまぁ常にツイテるんだけど。
鰹節も欲しいが、とりあえずは昆布だ!
昆布狩りじゃー!!
と気合を入れた時に邪魔が入るもんだ。
俺の携帯電話が鳴り出した。
相手は勇者君。
皆には昆布を集めてきてとお願いして、俺は電話に出る。
「はいは~い、福田です」
「どうも、吉田です。今、大丈夫ですか?」
「昆布狩りの最中だけど、OKだよ~」
「昆布狩り? あぁ、島にいるのですか」
島? 何故島?
……あぁ!! そうか!!
島なんだもん、周囲の海に昆布くらいあるかもしれないじゃん!
それに島のダンジョン! 1~2階は調味料だったはず。
ノーマルドロップで良かったのでチェックしてなかったけど、レアドロップに昆布とかあったかも?!
なんという事だ……。
「福田さん? 福田さん??」
「聞いてるよ~。なんだい?」
「何か、テンションがさっきより下がっていませんか?」
「気のせいだよ……。で、どうした~」
なかなか用件を話さない勇者君。
どうした?
「えっと、ですね……。ふ、福田さんは、ラノベは好きですか?」
「はぁ?」
いきなり何の質問だよ?
「いや、好きだけどさ、何?」
「いや、あの、あっ、その割には自重されてませんよね?」
「ん? 何で?」
「だって、カジノの町と王都に1件づつ家があるって凄いですよ?
自重してたら買いませんよね?」
「あぁ、そういう事?
生きるのにはね、お金が要るでしょ? それを得る為には、何らかの仕事をしなきゃいけない。
そこで自重してたら儲からないだろ?」
お前、仕事してないじゃんというツッコミは無しで。
「確かにそうですけど」
「そもそもさ、チート貰った主人公が目立ちたくないっておかしくない?
目立ちたくないならチートなんか貰うなよって話ですよ」
「それは知らない世界で生きる為に必要だからって事では……」
「うん。だから、知らない世界で生きる為に必要な分だけ貰えば良くない?
過ぎた力は必要無いでしょ、目立たずに平凡に生きるにはさ。
なのに過ぎた力を欲して、それが騒動の種になるからと自重する。意味が判らないよね」
「……福田さんはどうしたんですか?」
「最初は必要かなと自重したけど目立ったので、開き直ったら王と知り合いになった。
さっさと権力者と知り合いになれば、ある程度騒動からは逃げられる。
貴族が~とか言うなら、一番上と友達になれば問題無しだ!」
「そ、そうですか……」
「で、結局、何が言いたいの?」
何でラノベや自重の話なんだ?
何かそういうトラブルでもあったのかな?
まぁ、現実に今巻き込まれてるけど。




