プレゼント
ダンジョンを探しながら王都に向かおうと思ったが、よく考えたら先に用事を済ませた方が良いよね。
のんびり探せるしさ。
それに、王都ならダンジョンの場所の情報くらいはあるんじゃないか?
という事で、さっさと王都に向かう事にした。
王都に向かって7日目。残り半分って辺りまで来た時に、連絡が来た。
そう、勇者君である。
「お久しぶりです、福田さん」
「お~、久しぶり。どうした~?」
「クイールへの遠征は無くなりました!」
「そうかそうか。良かったな」
各国への根回しが、やっと効果を出したようだ。
すぐに諦めれば良いのに、時間がかかったなぁ。
ほんと、ダヒュテムって本人も信者も迷惑だよなぁ。
「それでですね、やっと魔王討伐に行く事になりまして」
「やっとか~」
「ええ。それをお伝えしようと思いまして、連絡しました」
「どれくらいで着くのかな?」
「え~とですね……実は今はまだ準備中でして、出発は早くて2日後くらいになると思います」
「クイールに向かわせる予定だった兵を、そのまま使えば良いんじゃない?
それなら準備出来てるでしょ?」
「それがですね……その軍勢はクイール近くの町『アド』に留め置くので使えないらしいのです。
何でも、攻められた場合に対処する兵が必要だからとの理由だそうで」
はぁ?!
って事は、隙があればまた攻める気じゃないか!
クイールは元々ロッツギルの土地なんだから、それ以上攻めては来ないだろうが!
「相変わらず、使えない国王だなぁ。
良い様に使われないように気をつけるんだよ?」
「はい。注意します」
気になるなぁ。
ああいうヤツって、勇者を使いまくりそうだ。
あっ、そうだ。良い事を思いついたぞ。
「え~と、君の仲間の誰かが転移を使えたよね?」
「はい。渡辺ですね」
「そうそう、その娘。今グランザムに居るんだけど、俺の所に転移って出来ないのかな?」
「一度行った事がある場所じゃないと、出来ないみたいですよ?」
「そうか~。あっ! って事は、俺の家なら可能か?」
「ちょっと待って下さい。……大丈夫みたいです」
「どっちの家もOKなの?」
「はい。ただ、島だけは行けないようですが」
島に行こうとしたのか。
神にもらった能力でもあの島には行けないんだね。
どれだけ強力な結界なんだ?
「じゃあカジノの町の家に来てもらえるかな?
あっ、皆で来なくても、1人で良いからね」
「判りました。でも、何の用です?」
「プレゼントがあるから」
「プレゼント……ですか?」
「そう。中身は貰ってからのお楽しみって事で」
「はぁ。判りました。向かわせます。今からでもOKですか?」
「う~ん。30分後にしようか」
「判りました」
俺は馬車から王都の家に帰り、町に出て水筒を8個買ってきた。
そう、エリクサーを持たせようと考えたんだ。
そのまま回復の泉に行き、エリクサーを水筒に汲む。
カジノの家に帰った時には、丁度30分後だった。
すると玄関のベルが鳴り、来客を告げた。
メイドさんが出て、リビングに連れてきてくれた。
わざわざ玄関の外に転移したのか。律儀だなぁ。
「呼んでるって言うから、来たよ~」
「おう、座れ座れ」
「で、プレゼントって何?!」
「お菓子じゃないから」
「え~……」
「落ち込むな! 判ったよ、お菓子は別でやるよ」
「本当に! 判った! じゃあ、早く早く!」
「プレゼントはコレだ」
「水筒? 中は……水?」
「持って帰って、鑑定能力の娘に見せろ。驚くから」
「うん。判った。じゃあお菓子!」
エリクサーよりお菓子の方が上ですか。




