エリクション
カンダさんの呼ぶ声で我に返った俺は、ホウズキさんの所に行く。
ケロはナグラさんとコタニさんに任せておいて。
って、何でホウズキさんは濡れてるんだ?
「おぉ、福田君! 堪能したよ!」
「その格好を見れば判りますよ。で、一応聞きますけど、何で濡れてるんですか?」
「そりゃ座標を調べる為に決まっているじゃろ?
確実に汲み取るには、中央に近い方が良いに決まっている。
なので中央付近の座標を調べる為に中に入ったのじゃよ」
「そうですか。では座標は判ったんですね?」
「勿論じゃ。キジマ君に書き留めてもらっておる。
これを元に、早速帰って魔法の作成じゃ!!」
「どれくらいかかりますか?」
「そうじゃのぉ……夜には完成するじゃろう」
「じゃあ、また夜にお伺いしますよ」
そういう事になったので、一旦ホウズキさんを家に帰した。
俺達は冒険を続けようとも思ったが、帰りの時間を考えればそろそろ戻った方が良いだろうって事になった。
何しろ戦闘無しで帰っても、2時間以上かかるのだ。
希少な鉱物は名残惜しいが、しょうがない。
まぁ、この部屋に『門のシール』を設置してるので、いつでも取りに来る事が出来るけど。
それに、すっかり忘れてたけど、グランザムの王に会う為に来てるんだ。
王都に向かわないとね。
外に出ると既に夕方。
周囲にはもう人が居ない。まあ元々少なかったけど。
町が近くにあるのに誰も居ないってのが変な感じだ。
多分だけど、最初はダンジョンの恩恵を得る為に人が集まり町になったのだろう。
だが、王の政策でダンジョンには行かなくなったって事じゃないだろうか?
ダンジョンの入り口に守りの兵が居ないし。
他の国では居たし、居なくても冒険者ギルドの人が居たりしてた。
希少な素材があるのに、もったいないよなぁ。
俺達は町には向かわずに、王都に続く街道を進んだ。
暗くなってきたので、脇に寄せて家に帰る。
家で晩飯を食べてから、全員でホウズキさんの所に行った。
「おお、福田君! 出来ておるぞ!!」
「さすがですね。読めば良いタイプですか?」
「勿論じゃ! それなら読んだ後に破棄出来るしの!」
「良いんですか?」
「なに、頭の中にはしっかり残っておるよ。作ろうと思えばいつでも作れるわ。
それよりもこれが広まる事の方が怖い。なので、覚えたら破棄するからの」
「了解です。ホウズキさんはもう使ってみました?」
「当然じゃ! 実験済みじゃから、危険は無いぞ。さ、覚えなさい」
書かれた紙を受け取り、内容を目で追う。
するといつもの様に、最後まで読んだ時、チクリと一瞬頭痛がした。
これで覚えたという事だ。
次にコタニさんに渡しておく。全員が覚えれば困る事は無いだろ。
「魔法を起動するキーワードは『エリクション』じゃ」
「どういう意味ですか?」
「エリクサーとアクションを組み合わせて作った造語じゃよ。意味は無い。
使用する魔力は100じゃ。これはアポーツと同じじゃよ。
元々アポーツを改造した魔法だから変わらないのは当然なんじゃが」
「結構消費するんですね」
「本当のアポーツは少し違うがね。
取り寄せる物の質量によって消費魔力が変わるんじゃ。
10kgくらいなら100のままじゃが、それから10kg毎に100づつ増えるんじゃよ」
20kgの物を取り寄せるならMPが200も必要なのか。
ムチャクチャだなぁ。
全員が覚えたので、紙をホウズキさんに返すとすぐに暖炉の中へ放り込んでしまった。
これで使える人間は俺達とホウズキさんだけとなった。
この国のダンジョンには、まだまだ未発見の物がありそうだな。
積極的に探しに行こう。王都に着くまでに何個くらいあるかなぁ。




