お菓子の使い方
俺は、いや俺達は回復の泉に戻った。
「なるほど! こういう場所なのじゃな!」
「あれっ? ホウズキさんはダンジョンは?」
「そうじゃ。初めてじゃよ。研究が忙しかったのでな」
初めてのダンジョンに、はしゃぐ爺さん。
少し落ち着きなさい!
「何でホウズキさんを連れてきたっスか?」
「いや、良い魔法を作ってくれるらしいからさ……しょうがなくだよ」
「ほほぅ! これが件の泉じゃな?! ふむふむ」
「って良いながら飲んでんじゃない!」
「鑑定で毒ではないと判ってるじゃろうが。飲んでも問題無いわ。
ふむ、今は怪我も病気もしていないから、何も起きぬか……」
「そりゃそうでしょうよ。老化まで治ったらビックリですよ」
「少しは期待したんじゃがの。ふむ……」
ホウズキさんは何を思ったのか、俺に近づいてきた。
俺に飲ませる気か? いや、俺も怪我してませんよ?
そう思ってたら俺の腰からレイピアを引き抜き、自分の左腕を刺した!
何やってんだジジイ!!
「ちょ、ちょっと!!」
「実験じゃよ、実験」
「それ、毒の効果もあるレイピアですよ?!」
「大丈夫じゃ。自分を鑑定して、毒になってないのは確認済みじゃ。
さて、腕にエリクサーをかけてくれないかね?」
「かけますよ! 後、早く飲んでください!」
「うむ。……おぉ!! 痛みが引いていくわい!
む、傷口も既に塞がりだしておるな。なかなかの効果じゃ!!」
「いきなり実験しないでくださいよ!!」
「そうは言うがな、やると言ったら止めておったじゃろ?」
「そりゃ止めますよ!」
「……この人、こんな人だったっけ?」
ナグラさんや、俺も今そう思ってる所だよ。
魔法バカ、恐るべし!
ある意味コルラド国と同じだな!!
「ふむふむ。福田君、少しの間実験させてもらうぞ。
座標も調べるから待っててくれたまえ」
「危険な事は無しですよ?」
「判っておるわ。ほれ、剣を返すぞ」
「信用出来ないので、見張りを付けますよ」
「勝手にせい」
カンキジコンビにホウズキさんの見張りを頼んでおいた。
あの2人なら、簡単に捕縛出来るだろう。
待つ間はヒマなので、重要な事を調べたいと思う。
何故か壁を前に体育座りをしているケロに近づく。
「お前、何やってんの?」
「貴方がどこかへ行ってる間、私は恐怖の連続だったんですよ!!」
「え? 何があったの?」
「皆に連れられてダンジョンに戻ったのですが……。
あの黒い板をイジると、何故か必ずケルベロスの所に着くのです。
そして問答無用でバトルに突入! しかも圧勝!! 全員がボコボコにされたのですよ!!」
「それをずっと見てたのね……」
「宝石を没収すると、ここに戻ってきて全員を泉に放り込みました。
回復したケルベロスは一目散に逃げていきましたけどね。
その時、皆が私を哀れむ目で見てくのです……」
「あ~、従魔って判るのか……」
「その後、ヒマになったのか、今度は私に近づいてきました。
私は恐怖で犬になってしまったのですが、それが目的だったようで犬の扱いをされました……」
「自分で犬って言ってるけどな。で、何をされたの?」
「お手・お座り・伏せなどのしつけに始まり、最後には投げた木の棒を拾って来いと……」
「そ、そうか……。じゃあお前には褒美をあげよう。ほら、これ」
「そ、それは!! お菓子ではないですか!! おおおおおお菓子だ……ワン!!」
ホウズキさんから聞いた通り、お菓子好きなようだ。
食欲って本能じゃん? お菓子与えたら犬になるかな~と考えてたが成功したようだ。
今は尻尾を千切れんばかりに振りながら、俺の手にあるお菓子を凝視している。
手を差し出すと、2つの首が競うように俺の手からお菓子を食べている。
うん、可愛いねぇ。
ホウズキさんが満足するまで、俺はケロをイジりまくった。




