グリッドとアポーツ
「まずは『グリッド』。これは場所の正確な座標を知る魔法じゃ。
座標とは、この世界を縦と横で細分化して表すものじゃ。
例えば、このリンゴが世界だとしよう。これに針を適当に刺す。
ヘタを0として一番下を10として等分する。
ヘタの向いている所を0として時計回りに8等分する。
こうすると、針を刺した場所が何処と説明しやすい。針の場所は縦3・横6じゃな。
どうじゃね? 理解出来るかね?」
「はい。大丈夫です」
緯度と経度の事だね。
日本人なら誰でも知ってるからな。
特に今は衛星を使って細かく判るし。
「この魔法は地図を作るのに便利だからと開発されたのじゃよ。
だが、誰でも簡単に精密な地図を作れるとなると、非常に危険じゃ」
「敵国の情報が筒抜けだからですね?」
「そういう事じゃ。なので禁忌魔法となって封印されたのじゃ」
正確な位置がバレれば、精密爆撃できるもんね。
そういう魔法を作って併用すれば、離れた場所から攻撃可能だ。
うん、危険だね。
「次に『アポーツ』。離れた場所の物を取り寄せる魔法じゃ。
忘れ物をして家を出た時に便利だと開発されたのじゃよ」
「あっ、確かに便利ですね」
「だが、泥棒が簡単に出来る事が判明した。それで上級魔法になったのじゃ」
「あれ? 禁忌魔法ですよね?」
「そうじゃ。『グリッド』と併用する事で、他の国に行く事無く武具や財産、さらには重要書類を盗む事が出来る。
これが判明したので、禁忌魔法になったのじゃ」
攻め込む予定の国の兵糧と武器を奪ってしまえば、楽々と攻め込めるって事か。
確かに『グリッド』と併用したら、最強魔法になるな……。
「禁忌魔法の事は判りました。
でもそれが、エリクサーとどんな関係が?」
「まず『グリッド』でエリクサーのある泉の場所を正確に特定する。
それを『アポーツ』に組み込んで使うのじゃ」
「なるほど! エリクサーを直接取り寄せるって事ですか!」
「そうじゃ。とっさに飲むのは難しいだろうが、浴びる事は出来るじゃろう」
上手い考えだ。
エリクサーと同等の効力の在る魔法を作るよりも簡単。
「凄い考えですけど、禁忌魔法ですよね?」
「うむ。まぁ、『アポーツ』を改良して泉にしかアクセス出来ないようにすれば良いじゃろ。
勿論、誰にも教える事の出来ぬ魔法じゃがな」
「解析されたらバレるのでは?」
「発動を見ただけで解析出来る者は居らぬよ。それに多分じゃが、見た目は『ウォーター』に酷似するじゃろう」
ウォーター。水を生み出す魔法か。
つまりは、生み出した水に何らかの効能を付けた魔法に見えるのか。
「で、どうするんです?」
「うむ。作るか」
「良いんですか?!」
「うむ。ワシもノートルダムの人間じゃ。……作ってみたい!!」
魔法バカでしたか。
まぁそういう人じゃないと、ここまで詳しくなれないよな~。
「ちなみに、禁忌魔法っていくつあるんですか?」
「そうじゃな。確か10個はあるはずじゃ」
「その内、ホウズキさんが作ったのは?」
「4つはあるのぉ。若気の至りじゃ」
危ない人だったわ!
違う、今でも危ない人だ!
「ちなみにちなみに、ホウズキさんは禁忌魔法をいくつ使えるんですか?」
「10個全て使えるぞぃ。引退してから増えてる分は無理じゃが」
「そ、そうですか……」
「では、早速座標を調べに行こうではないか。繋げてくれたまえ」
「……はい」




