禁忌魔法
「魔法でエリクサーと同等の効果を出せるか、という事だが、可能と言えるの」
「可能なんですか?!」
「可能なだけじゃよ。同等の効果を出すには、成分から効果まで全てを調べなくてはならない。
それが全て終わった後に、今度は魔法でそれを構築する必要がある。
つまりは、魔法にするには何年もかかるじゃろう」
「そういう事ですか……。じゃあすぐには無理ですね」
「無理じゃな。確かに冒険者には必要な魔法じゃろうが。
こればかりは難しいのぉ。それに完成するまでにかなりの障害もあるじゃろうて」
「障害ですか?」
エリクサーの存在を知れば、誰もが研究したがると思うのだが。
あっ! そういう事か。
「医者ですね?」
「そうじゃ。このような物が出回れば、医者は商売上がったりじゃ。
間違い無く、邪魔をされるじゃろうな」
「医者も生活がありますもんね……」
「そういう事じゃ。難しい問題じゃな。
なのですまんが、これは国家機密にさせてもらうしか無いぞ?」
「まぁ、仕方ないですよ。でも自分は使っても良いですよね?」
「発見者じゃからの。ちなみにどこで発見したのじゃ?」
「グランザムにあるダンジョン内です」
「……あぁ、なるほど」
「何か?」
「グランザムはダンジョン探索を推奨していないのじゃよ」
えっ? モンスターを倒せば物が手に入るのに?
便利なのに、何故推奨していないのだろうか?
「何故ダンジョンに居るモンスターはドロップ品を出すのか、いまだに謎が解けておらん。
いつ無くなるか判らない物に依存してはいけない、という考えなのじゃよ」
「なるほど。国の考えとしては判りますね」
「だからあの国は農業が栄えておる。そのせいで土地が足りなくなって、他国に攻め込んでおったがな」
「そういう歴史があるんですね」
「うむ。だからグランザムのダンジョンには、まだ知られてない物があるはずなんじゃよ。
ちなみに、グランザムでは冒険者は居ない。同じ様な事をしている者達は傭兵と言われておるな」
確かに、ダンジョンに行かないなら冒険者は住みにくい。
行く依頼も少ないだろうし。戦争が多いので、傭兵って訳か。
「しかし、グランザムか……。面倒な所にあったのぉ」
「他のダンジョンにもあるかもしれませんけどね」
「せめてノートルダムにあるダンジョンだったならのぉ……」
「ん? 何か意味有りげですね?」
「う、うむ。まあな……」
「何か?」
「……良かろう。ここからはさらに秘密の話じゃ。聞くか?」
「は、はい」
何だろう?
かなり真剣な顔で問い詰められた。
だが、聞かないと損しそうだ。俺の勘がそう告げている。
もしかしたら、運が作用してるのかも。
「魔法が4系統あるのはしっておるな?」
「はい。生活魔法・攻撃魔法・支援魔法・空間魔法の4つですね?」
「そうじゃ。だが、実はもう1つあるのじゃよ」
「もう1つ?」
「それは禁忌魔法じゃ」
「禁忌魔法?!」
「存在自体も少人数しか知らない。使える人間はほとんど居ないじゃろう」
「そんな危険な魔法なんですか?!」
「ある意味危険じゃ」
「……どういう事ですか?」
「このエリクサーもそうじゃが、戦争の火種になるからじゃよ」
「戦争……」
ヤバい話になってきたな。
確かにエリクサーも存在が判ればヤバいだろう。
グランザムでしか手に入らないとなれば戦争が起きても不思議じゃない。
各国は手に入れたいだろうし、グランザムは兵に持たせて進軍すれば強兵の出来上がりだ。
「その禁忌魔法に『グリッド』と『アポーツ』という魔法があるのじゃよ」
「……その2つの魔法が何か?」
「この2つの魔法があれば、エリクサーと同等の魔法が作れるはずじゃ。しかもすぐにでも」
「すぐに?!」
「そうじゃ」
どんな魔法なんだ?
名前からはなんとなくは想像出来るが……?




