素材のダンジョン
移動の最中にニーベル国に戻り、王に受け取った親書の返信を渡しておいた。
これで勇者がクイールに出向く事は無くなるだろう。
そこで聞いた話だが、グランザム帝国の王が俺に会いたいらしい。
どうもギャンブル大会で負けた事が信じられないそうで、本国で勝負したいとの事。
本人が行きたいと言うなら行くだろうと伝えたそうだが。
あまり行く気にはならないね。面倒そうなんだもん。
だが、このままロッツギルを海側に出てもただ帰るだけだ。
ロッツギルの隣の国だし、寄って行っても良いかもしれない。
面倒事になれば逃げ帰れば良いし。
それに、王都から海側に出るよりもグランザムの方が近い。
って事で、方向転換してグランザムに向かう事にした。
2日後。
道中は何事も起きずにグランザムとの国境に到着した。
姫様は怒ってるが、俺が悪い訳じゃないし。
まあ『グランザムへの道中に、何も起きませんように』とは願っておいたが。
グランザムへはさすがに姫様は行く事が出来ないので、ここでお別れだ。
付いて来たがってるので、近衛団長が頑張って抑えている。
「皆様、早く国境を越えてください!」
「ではお元気で~」
「ぬあー! 私も行くんだー!!」
「姫様、さようなら~」
「待て! 待ってくれ! 連れて行ってくれー!!」
さようなら姫様。貴方の事は忘れないよ……。
無事に国境も越える事が出来た。
今日からはグランザムだ。
国境の兵に聞いた所、グランザムの帝都は北の海沿いにあるそうな。
ここからは15日かかるらしい。なかなかの距離だ。
移動中に何事も無ければ良いんだが……。
ってこういう事を考えると、フラグが立つって言うよね。
15日も移動してたら、何か起きるよな。
大体、それだけ時間があれば、勇者が魔王城に行ってるだろ。
何らかの連絡があるに違いない。
それまでは、旅を満喫しよう。
3日後。
近くにダンジョンがある町に到着した。
このダンジョンは『素材の宝庫』と呼ばれているらしい。
その名の通り、モンスターからドロップする物は素材ばかりなんだってさ。
素材の事は何も知らないので、タルーンさんに電話して聞いてみよう。
「『素材の宝庫』に居るのですか?」
「ええ。そうなんですよ」
「そのダンジョンからは、アダマンタイトやヒヒイロカネといった素材が入手出来ますよ!」
おっと、出たね! ファンタジー金属!
入手した所で、今更何に使うのかって思うけど。
「他には何かありますか?」
「他ですか? あぁそうでしたね。福田さんはもう装備は充実してますからね」
「そうなんですよ~。他に便利そうな物ってないです?」
「そうですねぇ……。あっ、良い物がありますよ!」
「えっ? 何ですか?」
「『魔法の皮』と『命の石』いう物があります」
「『魔法の皮』?」
「ええ。その素材は『異次元のカバン』を作るのに必要な物です」
「ほう。それは良いですね。『命の石』というのは?」
「それは『身代わりの指輪』を作るのに必要な素材です。
その他にも『毒消しの指輪』等も作る事が出来ますよ」
結構、魅力的な物が作れるじゃないか。
これは立ち寄るしかないでしょ。
「よく判りました。ありがとうございます。寄ってみますね」
「福田さん! ついでで良いので、アダマンタイトやヒヒイロカネも! お願いします!!」
「判りました。お土産に取って帰りますよ」
「お願いしますよ!!」
タルーンさんへのお土産も決まったし、気合入れて採取しようかね。




