銅色冒険者
引き返して冒険者ギルドの場所を聞いてきた。
戻ってきた俺の顔を見て驚いてたなぁ。返品しに来たと思ったんだろう。
ま、200万も即金で払ったからね。
冒険者ギルドは川に掛かる橋の近くで、赤い屋根が特徴らしい。
そして、赤い屋根が見えた頃に気づいた。
さっきの金物屋で、貸し倉庫とかしりませんかって聞けば良かった事に……。
何か俺、非常に遠回りをしているな……。
今回は一人だから、ちゃんと考えてるぜ。
冒険者証を服から出して見えるようにする。
冒険者なんだから、剣をちゃんと腰につけておく。
これでバカは絡んで来ないだろ。
おっと、まだあったな。
王様とも知り合いだという事のアピールとして、親書を手に持っておこう。
王家の紋章で封印がしてあるから、判るだろ。
ふふふ、ここまでテンプレ対策した転生者はいないだろ?
ギルドには、結構人が居た。
昼だから少ないと思ってたんだけどな。
周りを見渡すと、理由が判った。
川で魚を獲るという依頼を受けている人が多いのだ。
その魚を新鮮な内にギルドに持ち込んでいる。それをギルドの職員が魔法で凍らせている。
渡し終えたら、また漁に行くのだろう。
その他では、商人の護衛依頼だと思う人がまばらに居る。
どこからかは知らないけど、丁度昼くらいに着くんだろうね。
「おい、そこのキョロキョロしてる奴」
なるほどねぇ。
昼はギルドに人が少ないってのはラノベだけなのね。
「おい! 無視するな!」
それにしても、ここの川ではどんな魚が獲れるのだろうか?
フナとか鯉なら要らないけさ。
「俺様を無視するとは良い度胸じゃねぇか!!」
でも、鮎とか岩魚なら欲しいな。
聞いてみようかな? いや、市場に行けば売ってるか?
「おい! こっちを向け!!」
突然、肩を掴まれて引っ張られた。
「何だよ、今、魚の事を考えてたのに」
「お前が無視するからだ!」
「無視なんかしてないぞ」
「してたんだよ!」
何だ、コイツは。角刈りの髪型にフルプレートの鎧を着たオッサン。
いや、30歳くらいか? オッサンは失礼だな。俺も20代後半だし。
オッサン呼ばわりしたら、俺もオッサンって事になってしまう。
よく見れば、首から下げてる冒険者証は銅色じゃないか。
確か一番上が金で、銀、銅、と続くんだったっけ。
俺の赤より2つ上だ。
「で、何の用だよ?」
「お前、良い武器持ってるじゃねぇか。ちょっと貸してくれよ」
「はぁ?」
まさかここまでやったのに、バカに絡まれるとは思わなかったぜ……。




